誰が対象になるか
第1項は3つの立場を並べている(厚生年金保険法第46条第1項)。
| 立場 | 条件 |
|---|---|
| 被保険者 | 前月以前の月に属する日から引き続き被保険者の資格を有する者 |
| 国会議員・地方公共団体の議会の議員 | 前月以前の月に属する日から引き続きその地位にある者 |
| 70歳以上の使用される者 | 前月以前の月に属する日から引き続き厚生年金保険法第27条の厚生労働省令で定める要件に該当する者 |
70歳以上で厚生年金の被保険者でなくなっても、使用されていれば対象になる。
総報酬月額相当額の出し方
標準報酬月額と、その月以前1年間の標準賞与額の総額を12で除して得た額とを合算して得た額である(厚生年金保険法第46条第1項)。
賞与も月割りにして入れる。 標準報酬月額だけではない。標準報酬月額そのものは社会保険料(厚生年金・健康保険)で扱っている。
国会議員等と70歳以上の使用される者については、政令で定める額に読み替える(同項かっこ書き)。
基本月額から除かれるもの
第1項のかっこ書きが2つを除いている。
| 除かれるもの | 条番号 |
|---|---|
| 加給年金額 | 厚生年金保険法第44条第1項 |
| 繰下げの加算額 | 厚生年金保険法第44条の3第4項 |
| 合わせて除いたうえで12で除する | 厚生年金保険法第46条第1項 |
この道具は、除いた後の年金額を入れてもらう形にしている。
支給停止調整額は、条文の本則の62万円では計算できない
第1項の支給停止調整額は、62万円とする(厚生年金保険法第46条第3項)。
料率や基準額が政令や告示にしか無い制度が多いなかで、この額は法律の本文に書かれている。
しかし、本則の額をそのまま使うことはできない。 同項ただし書が毎年度の改定を定めている。62万円に、令和7年度以後の各年度の物価変動率と第43条の2第1項第2号に掲げる率を乗じて得た額(5,000円未満は切り捨て、5,000円以上1万円未満は1万円に切り上げ)が62万円を超え、または下るに至った場合、その年度の4月以後の支給停止調整額を改定する。
改定の措置は政令で定める(厚生年金保険法第46条第4項)。改定後の額は法律には現れない。
だからこの道具は、支給停止調整額を入力してもらう形にしている。 適用される年度の額を入れること。本則の62万円(厚生年金保険法第46条第3項)を入れたままにすると、改定後の年度では答えが変わる。
[!warning] 2026-09-20 に直したこの道具は 2026-09-20 まで、本則の62万円を答えとして出していた。 改定の仕組みは上に書いていたのに、計算にはそれを反映していなかった。条番号を書いていても、当てはめる額を間違えれば答えは間違う。
停止するのは、超えた分の2分の1に12を掛けた額
総報酬月額相当額と基本月額との合計額が支給停止調整額を超えるとき、その合計額から支給停止調整額を控除して得た額の2分の1に相当する額に12を乗じて得た額の支給を停止する(厚生年金保険法第46条第1項)。
超えた額の全部が止まるのではない。2分の1である。
停止額が年金額以上なら全部止まる
支給停止基準額が老齢厚生年金の額以上であるときは、その全部の支給を停止する(厚生年金保険法第46条第1項ただし書)。
差し引いて負にはならない。
月単位で判定する
第1項は「その月の分の当該老齢厚生年金について」と書いている(厚生年金保険法第46条第1項)。
年単位ではない。 標準報酬月額が変われば、その月から支給停止額も変わる。
全部停止のときは第36条第2項を適用しない
第1項により老齢厚生年金の全部または一部の支給を停止する場合、第36条第2項の規定は適用しない(厚生年金保険法第46条第5項)。
加給年金額の扱い
第44条第1項によりその額が加算された老齢厚生年金については、加給年金額の側にも支給停止の定めがある(厚生年金保険法第46条第6項)。
この道具は加給年金額を除いた額で計算している。
老齢基礎年金は止まらない
支給停止の対象は老齢厚生年金である(厚生年金保険法第46条第1項)。老齢基礎年金は国民年金法にあり、在職による支給停止の定めは無い。国民年金の保険料と老齢基礎年金を参照。
よくある取り違え
1. 「超えた額が全部止まる」
2分の1である(厚生年金保険法第46条第1項)。
2. 「62万円を使えばよい」
62万円は法律の本文にある(厚生年金保険法第46条第3項)。だが、その年度に当てはめる額は政令にある(同条第4項)。本則の額と、当てはめる額は別のものである。
3. 「総報酬月額相当額は標準報酬月額のこと」
総報酬月額相当額は標準報酬月額だけではない。その月以前1年間の標準賞与額の総額を12で除した額も合算する(厚生年金保険法第46条第1項)。
4. 「老齢基礎年金も止まる」
止まらない。 対象は老齢厚生年金である(厚生年金保険法第46条第1項)。
5. 「加給年金額も基本月額に入る」
除かれる(厚生年金保険法第46条第1項かっこ書き・同法第44条第1項)。
よくある質問
70歳以上でも対象ですか
対象である(厚生年金保険法第46条第1項)。厚生年金保険法第27条の厚生労働省令で定める要件に該当する者である。
いつから止まりますか
第1項は「その月の分の当該老齢厚生年金について」と書いている(厚生年金保険法第46条第1項)。月単位である。
賞与が多い月はどうなりますか
総報酬月額相当額には、その月以前1年間の標準賞与額の総額を12で除した額が入る(厚生年金保険法第46条第1項)。1か月だけで跳ねない。
退職したら戻りますか
第1項の要件から外れれば支給停止は無くなる。 資格喪失の扱いは厚生年金保険法第14条にある。
繰下げをしていた場合は
繰下げの加算額は基本月額から除かれる(厚生年金保険法第46条第1項かっこ書き・同法第44条の3第4項)。
支給停止額に上限はありますか
支給停止基準額が老齢厚生年金の額以上であるときは、その全部を停止する(厚生年金保険法第46条第1項ただし書)。年金額を超えて引かれることはない。
この計算が扱っていないこと
- 支給停止調整額の毎年度の改定(厚生年金保険法第46条第4項の政令)
- 国会議員等・70歳以上の使用される者の読み替え(同条第1項かっこ書き・第2項)
- 加給年金額の支給停止(同条第6項)
- 老齢厚生年金の額そのもの(厚生年金保険法第43条)
老齢基礎年金は国民年金の保険料と老齢基礎年金にある。数字をどう確かめたかは検算の方法にある。