公的年金等に係る雑所得の金額は、その年の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を引いた残額である(所得税法第35条第2項第1号)。
公的年金等控除額は、イとロを足した金額である(所得税法第35条第4項)。合計が最低保障額に満たない場合は、最低保障額になる。
イ 定額の部分は、年金以外の所得で決まる
| 年金以外の合計所得金額 | イの金額 | 最低保障額 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 40万円 | 60万円 | 所得税法第35条第4項第1号 |
| 1,000万円超 2,000万円以下 | 30万円 | 50万円 | 同項第2号 |
| 2,000万円超 | 20万円 | 40万円 | 同項第3号 |
ここでいう合計所得金額は、その年の公的年金等の収入金額がないものとして計算したものである(所得税法第35条第4項第1号)。
ロ 収入に応じた部分
収入金額から50万円を引いた残額によって、4つに分かれる(所得税法第35条第4項第1号ロ)。
| 50万円を引いた残額 | ロの金額 | 条番号 |
|---|---|---|
| 360万円以下 | 残額 × 25% | 所得税法第35条第4項第1号ロ(1) |
| 360万円超 720万円以下 | 90万円 +(残額 − 360万円)× 15% | 同ロ(2) |
| 720万円超 950万円以下 | 144万円 +(残額 − 720万円)× 5% | 同ロ(3) |
| 950万円超 | 155万5,000円 | 同ロ(4) |
ロの部分は、年金以外の所得がいくらであっても変わらない。第2号も第3号も「前号ロに掲げる金額」「第一号ロに掲げる金額」と書いて、第1号ロをそのまま引いている(所得税法第35条第4項第2号・第3号)。
65歳以上の110万円は所得税法にない
よく知られている「65歳以上は110万円」という最低保障額は、所得税法第35条には書かれていない。租税特別措置法第41条の15の3第1項が、所得税法の条文を読み替えている。
読み替えの内容は次のとおりである(租税特別措置法第41条の15の3第1項)。
| 所得税法第35条第4項の | 65歳以上の場合は |
|---|---|
| 第1号の「60万円」 | 110万円 |
| 第2号の「50万円」 | 100万円 |
| 第3号の「40万円」 | 90万円 |
読み替えられるのは最低保障額だけである。 イの40万円・30万円・20万円(所得税法第35条第4項第1号〜第3号)も、ロの段(同項第1号ロ)も、読み替えられていない。
年齢が65歳以上である個人が、平成17年以後の各年において公的年金等の収入金額がある場合に適用される(租税特別措置法第41条の15の3第1項)。
控除額が収入を超えるとき
条文は最低保障額を「合計額が六十万円に満たない場合には、六十万円」と書いており(所得税法第35条第4項第1号)、収入金額を超えてはならないとは書いていない。収入が最低保障額を下回る場合の扱いは条文に無い。このページは雑所得を0円としている。これは条文から出したものではない。
雑所得は総所得金額に入り(所得税法第22条第2項第1号)、所得控除を引いた残額に所得税の税率を掛ける。年金以外に給与がある場合は給与所得控除を先に引く。
65歳の線は、所得税法ではなく措置法にある
所得税法第35条第4項が公的年金等控除額を定めているが、65歳以上の区分そのものは租税特別措置法第41条の15の3にある。
「65歳以上なら110万円」という広く知られた数字は、所得税法第35条を読んでも出てこない。 措置法を見ないと辿り着けない。
先に一定額を引いてから段に当てる
まず50万円を引く(所得税法第35条第4項第1号ロ)。その残額に段を当てる。
| 段 | 率 | 底 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 360万円以下 | 25% | 0円 | 所得税法第35条第4項第1号ロ(1) |
| 360万円超 720万円以下 | 15% | 90万円 | 同号ロ(2) |
| 720万円超 950万円以下 | 5% | 144万円 | 同号ロ(3) |
| 950万円超 | 定額 155万5,000円 | — | 同号ロ(4) |
段は「枝」で書かれている。 号の下に(1)(2)(3)(4)と枝番号が並ぶ形である。
合計所得金額でも3段に分かれる
公的年金等以外の所得が多いと、控除額が下がる(所得税法第35条第4項第1号〜第3号)。
| 公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額 | 号 | 条番号 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 第1号 | 所得税法第35条第4項第1号 |
| 1,000万円超 2,000万円以下 | 第2号 | 同項第2号 |
| 2,000万円超 | 第3号 | 同項第3号 |
号によって、最低保障額と段の底が変わる。 年金の額だけでは決まらない。
最低保障額がある
各号のイに、控除額の最低額が書かれている(所得税法第35条第4項各号イ)。年金の額が小さくても、この額までは引ける。上の計算は、どの号のどの枝で計算したかを出している。
公的年金等とは何か
所得税法第35条第3項が定めている。 国民年金法・厚生年金保険法などによる年金、恩給、確定給付企業年金法による年金などが挙げられている。
老齢基礎年金・老齢厚生年金はここに当たる。国民年金の保険料と老齢基礎年金を参照。障害基礎年金・遺族基礎年金は非課税である(国民年金法第25条)。障害基礎年金・遺族基礎年金を参照。
雑所得の一部である
公的年金等に係る所得は雑所得である(所得税法第35条第1項)。総所得金額に入る(同法第22条第2項第1号)。
端数の扱い
所得税法第35条第4項は端数について何も書いていない。
よくある取り違え
1. 「65歳以上は110万円と所得税法に書いてある」
書いていない。租税特別措置法第41条の15の3にある。
2. 「年金の額だけで控除額が決まる」
公的年金等以外の合計所得金額でも3段に分かれる(所得税法第35条第4項第1号〜第3号)。
3. 「障害年金にも課税される」
非課税である(国民年金法第25条)。公的年金等控除の対象にもならない。
4. 「公的年金等は分離課税」
雑所得として総所得金額に入る(所得税法第35条第1項・同法第22条第2項第1号)。
5. 「個人年金保険も公的年金等」
所得税法第35条第3項の号に当たるかどうかで決まる。 生命保険の個人年金は通常この号に当たらない。
よくある質問
年金から源泉徴収されますか
所得税法第203条の2以下に定めがある。 第35条には書かれていない。
確定申告は必要ですか
所得税法第121条第3項に、公的年金等の申告不要の定めがある。
給与と年金の両方がある場合は
それぞれの所得を計算して合算する(所得税法第22条第2項第1号)。給与所得の側は給与所得控除を参照。
遺族年金も対象ですか
非課税である(国民年金法第25条・厚生年金保険法第41条第2項)。
65歳はいつの時点で見ますか
租税特別措置法第41条の15の3が年齢の区分を定めている。 この道具は年齢を入れてもらう形にしている。
住民税でも同じ控除ですか
地方税法は所得税法の計算の例による形をとっている。 雑所得の金額そのものは所得税法第35条で計算する。
この計算が扱っていないこと
- 公的年金等に当たるかどうかの判定(所得税法第35条第3項)
- 年金からの源泉徴収(所得税法第203条の2以下)
- 申告不要の判定(所得税法第121条第3項)