扶養控除は、控除対象扶養親族がいる場合に、その1人につき一定額を引く制度である(所得税法第84条第1項)。
3つの区分
| 区分 | 控除額 | 条番号 |
|---|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | 所得税法第84条第1項 |
| 特定扶養親族 | 63万円 | 同項かっこ書き |
| 老人扶養親族 | 48万円 | 同項かっこ書き |
第84条第1項は「その控除対象扶養親族一人につき三十八万円(その者が特定扶養親族である場合には六十三万円とし、その者が老人扶養親族である場合には四十八万円とする。)」と書いている。63万円と48万円はかっこ書きの中にある。
年齢と所得の要件はどこにあるか
年齢の要件は第84条ではなく定義規定にある。
扶養親族とは、生計を一にする親族などのうち、合計所得金額が58万円以下である者をいう(所得税法第2条第1項第34号)。控除対象扶養親族は、居住者については年齢16歳以上の者をいう(同項第34号の2イ)。特定扶養親族は、控除対象扶養親族のうち年齢19歳以上23歳未満の者をいう(同項第34号の3)。老人扶養親族は、控除対象扶養親族のうち年齢70歳以上の者をいう(同項第34号の4)。
16歳未満の親族は扶養親族には当たるが、控除対象扶養親族ではないため扶養控除の対象にならない(所得税法第2条第1項第34号の2)。
同居老親等の加算は所得税法にない
同居の老親等については、扶養控除の額に10万円を加算する定めがある。これは所得税法第84条ではなく、租税特別措置法第41条の16(同居の老親等に係る扶養控除の特例)にある。このページは所得税法第84条にある3つの区分だけを計算している。
配偶者は扶養親族から除かれる(所得税法第2条第1項第34号)。配偶者については配偶者控除または配偶者特別控除による。
誰が控除対象扶養親族になるか
条文は3段の入れ子になっている。扶養親族 → 控除対象扶養親族 → 特定扶養親族・老人扶養親族 の順に絞られる。
| 語 | 中身 | 条番号 |
|---|---|---|
| 扶養親族 | 居住者の親族(配偶者を除く)等で生計を一にし、合計所得金額が58万円以下の者 | 所得税法第2条第1項第34号 |
| 控除対象扶養親族 | 扶養親族のうち、居住者なら年齢16歳以上の者 | 所得税法第2条第1項第34号の2イ |
| 特定扶養親族 | 控除対象扶養親族のうち、年齢19歳以上23歳未満の者 | 所得税法第2条第1項第34号の3 |
| 老人扶養親族 | 控除対象扶養親族のうち、年齢70歳以上の者 | 所得税法第2条第1項第34号の4 |
16歳未満は控除対象扶養親族に当たらない。 所得税法第2条第1項第34号の2イが「年齢十六歳以上の者」と書いているためである。扶養親族ではあるが、扶養控除の対象にはならない。
青色事業専従者として給与の支払を受ける者と、事業専従者は、そもそも扶養親族から除かれる(所得税法第2条第1項第34号かっこ書き・同法第57条第1項・第3項)。
非居住者の扶養親族は要件が違う
控除対象扶養親族の定義は、居住者と非居住者で分かれている(所得税法第2条第1項第34号の2)。
| 区分 | 年齢の要件 | 条番号 |
|---|---|---|
| 居住者 | 16歳以上 | 所得税法第2条第1項第34号の2イ |
| 非居住者 | 16歳以上30歳未満、または70歳以上 | 所得税法第2条第1項第34号の2ロ |
非居住者で30歳以上70歳未満の場合は、さらに3つのいずれかに当たることが要る(同号ロ(1)〜(3))。留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者、障害者、その居住者からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者である。
同居の老親等の10万円は、所得税法には無い
老人扶養親族が居住者またはその配偶者の直系尊属で、かつ、いずれかとの同居を常況としている場合、扶養控除の額に10万円を加算する(租税特別措置法第41条の16第1項)。
この定めは所得税法第84条には無い。租税特別措置法第41条の16第1項にある。
したがって同居老親等の控除額は48万円+10万円=58万円になるが、48万円は所得税法第84条第1項、10万円は租税特別措置法第41条の16第1項という別々の条から来ている。この道具は所得税法第84条にある3区分だけを出す。
住民税の扶養控除は額が違う
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 38万円(所得税法第84条第1項) | 33万円(地方税法第314条の2第1項第11号) |
| 特定扶養親族 | 63万円(同項) | 45万円(同号) |
| 老人扶養親族 | 48万円(同項) | 38万円(同号) |
所得税と住民税で額が違う。 住民税の側は市町村民税が地方税法第314条の2第1項第11号、道府県民税が同法第34条第1項第11号にある。
端数の扱い
所得税法第84条第1項は端数について何も書いていない。 38万円・63万円・48万円のいずれかをそのまま引く。人数分を掛けても端数は出ない。
よくある取り違え
1. 「子どもがいれば扶養控除がある」
16歳未満は対象外である(所得税法第2条第1項第34号の2イ)。年少扶養親族には扶養控除が付かない。ただし児童手当は年齢の考え方が別で、児童手当法第4条による。
2. 「特定扶養親族は大学生のこと」
条文が見ているのは年齢だけである。 所得税法第2条第1項第34号の3は「年齢十九歳以上二十三歳未満の者」と書いている。在学しているかどうかは要件に無い。
3. 「同居の老親等は所得税法に書いてある」
書いていない。租税特別措置法第41条の16第1項である。 所得税法第84条だけを読むと10万円の加算に辿り着けない。
4. 「合計所得金額48万円以下が扶養親族の要件」
現行は58万円以下である(所得税法第2条第1項第34号)。基礎控除の引上げに合わせて動いた数である。基礎控除を参照。
5. 「70歳以上ならすべて老人扶養親族」
控除対象扶養親族であることが先に要る(所得税法第2条第1項第34号の4)。合計所得金額が58万円を超えていれば、そもそも扶養親族に当たらない。
よくある質問
何人でも引けますか
引ける。 所得税法第84条第1項は「その控除対象扶養親族一人につき」と書いており、人数の上限は無い。上の計算欄も人数を入れる形にしている。
兄弟で同じ人を扶養控除の対象にできますか
所得税法第84条第1項は「その居住者の」控除対象扶養親族と書いている。 同じ人を2人が同時に対象にすることは、扶養親族の定義(所得税法第2条第1項第34号)が「その居住者と生計を一にする」ことを求めている点から絞られる。具体的な振り分けの手続はこの条には無い。
年齢はいつの時点で見ますか
所得税法第2条第1項第34号の3・第34号の4は「年齢十九歳以上二十三歳未満」「年齢七十歳以上」とだけ書いている。 判定の時点そのものは同法第85条にあり、この道具は年齢の区分を入れてもらう形にしている。
扶養控除と配偶者控除は両方引けますか
引ける。別の条である。 扶養控除は所得税法第84条、配偶者控除は同法第83条で、扶養親族の定義そのものが配偶者を除いている(所得税法第2条第1項第34号)。配偶者控除を参照。
障害者控除と重ねられますか
重ねられる。 障害者控除は所得税法第79条第2項で、扶養親族が障害者である場合に別途引く。扶養控除(同法第84条)とは別の条である。障害者控除を参照。
生計を一にするとは同居のことですか
所得税法第2条第1項第34号は「生計を一にする」としか書いていない。 同居を要件にしていない。ただし同居老親等の10万円加算(租税特別措置法第41条の16第1項)は「同居を常況としている者」と、そちらは同居を要件にしている。
条文の言い方をそのまま読む
所得税法第84条第1項は、1つの文で3つの額を書いている。
その控除対象扶養親族一人につき三十八万円(その者が特定扶養親族である場合には六十三万円とし、その者が老人扶養親族である場合には四十八万円とする。)を控除する
ここから3つのことが読める。
- 既定は38万円である。 特定でも老人でもなければこの額になる
- 63万円と48万円はかっこ書きの中にある。 本則の38万円を置き換える形で書かれている
- 「一人につき」なので人数を掛ける。 第84条第1項は人数の上限を書いていない
同条第2項は「前項の規定による控除は、扶養控除という」とだけ書いている。名前を決めているのは第2項である。
所得税の計算のどこに入るか
扶養控除は所得控除である。所得税法第21条第1項第3号の段で、税率を当てる前の所得から引く。税額から引く配当控除(所得税法第92条)とは段が違う。
所得控除どうしの順序は、雑損控除だけが先と決まっている(所得税法第87条第1項)。同項は扶養控除を名指しで挙げているが、扶養控除と他の控除のあいだに順序は無い。雑損控除を参照。
引く先は総所得金額・山林所得金額・退職所得金額の順である(所得税法第87条第2項)。
何を入れれば正しく計算できるか
上の計算欄に入れるのは区分と人数である(所得税法第84条第1項)。
区分は年齢で決まる。16歳以上が控除対象扶養親族(所得税法第2条第1項第34号の2イ)、そのうち19歳以上23歳未満が特定扶養親族(同項第34号の3)、70歳以上が老人扶養親族(同項第34号の4)である。16歳未満はここに入れない。
その人の合計所得金額が58万円以下であることが前提である(所得税法第2条第1項第34号)。超えていれば扶養親族に当たらないので、人数に数えない。
所得の要件は、控除ごとに数字が違う
扶養控除の「合計所得金額58万円以下」は、扶養親族の定義(所得税法第2条第1項第34号)から来ている。似た要件が他の控除にもあるが、数字も条番号も違う。
| 控除 | 誰の所得を見るか | 額 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 扶養控除 | 扶養親族 | 58万円以下 | 所得税法第2条第1項第34号 |
| 配偶者控除 | 同一生計配偶者 | 58万円以下 | 所得税法第2条第1項第33号 |
| 配偶者控除 | 本人 | 1,000万円以下 | 所得税法第2条第1項第33号の2 |
| 老人控除対象配偶者 | 配偶者の年齢 | 70歳以上 | 所得税法第2条第1項第33号の3 |
| 勤労学生控除 | 本人 | 85万円以下 | 所得税法第2条第1項第32号 |
| 寡婦控除・ひとり親控除 | 本人 | 500万円以下 | 所得税法第2条第1項第30号・第31号 |
| 基礎控除 | 本人 | 2,500万円以下 | 所得税法第86条第1項 |
「103万円」「130万円」といった数字は、所得税法第84条にも第2条にも出てこない。 給与収入の話と合計所得金額の話が混ざったものである。条文が見ているのは合計所得金額である。
- 配偶者の側は配偶者控除と配偶者特別控除
- 本人の事情は寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除
- 19歳以上23歳未満で所得が多い親族は特定親族特別控除
源泉控除対象親族という別の語がある
所得税法第2条第1項第34号の5に源泉控除対象親族という語がある。控除対象扶養親族に加えて、19歳以上23歳未満で合計所得金額が100万円以下の親族(控除対象扶養親族に該当しないものに限る)を含む。
これは月々の源泉徴収で使う区分であって、年末に確定する扶養控除の額とは別の話である。源泉徴収税額表の扶養親族等の数は給与の源泉徴収税額(月額表)で扱っている。
端数と人数の掛け方
所得税法第84条第1項は「一人につき」と書いている。 額に人数を掛けるだけで、端数は出ない。区分が違う扶養親族が複数いる場合は、区分ごとに額を掛けて足す。
たとえば特定扶養親族1人と老人扶養親族1人なら、63万円+48万円=111万円になる(所得税法第84条第1項)。上の計算欄は区分を1つずつ選ぶ形にしているので、区分が混ざるときは分けて計算して足すこと。
この控除が使えなくなる場合
扶養親族の合計所得金額が58万円を超えた年は、その年の扶養控除が無くなる(所得税法第2条第1項第34号)。年の途中で超えても、判定はその年の合計所得金額で行う。
16歳の誕生日を迎える年から対象になる(所得税法第2条第1項第34号の2イ)。判定の時点そのものは所得税法第85条にある。
扶養親族の判定は年末で行う
所得税法第85条第1項が、控除対象扶養親族に該当するかどうかの判定の時期を定めている。
その年12月31日の現況による(所得税法第85条第1項)。ただしその年の途中で死亡し、または出国する場合は、その時の現況による(同項かっこ書き)。
年の途中で16歳になった子も、年末に16歳以上であれば控除対象扶養親族になる(所得税法第2条第1項第34号の2イ・同法第85条第1項)。
この計算が扱っていないこと
- 同居老親等の10万円加算(租税特別措置法第41条の16第1項)
- 住民税の扶養控除(地方税法第314条の2第1項第11号・同法第34条第1項第11号)
- 扶養親族に当たるかどうかの判定(所得税法第2条第1項第34号)。人数を入れてもらう形にしている
- 年齢の判定の時点(所得税法第85条)