けんざん制度で決まった金額を、条番号つきで計算する

給与所得者の特定支出控除

特定支出控除とは、給与所得者が支出した特定支出の合計額が給与所得控除額の一定の割合を超える場合に、その超える部分を給与所得の金額から差し引く特例である(所得税法第57条の2)。

引けるのは給与所得控除額の2分の1を超える部分だけです(所得税法第57条の2第1項)。ちょうど2分の1では引けません。

計算する

所得税法第57条の2第2項第1号〜第7号の支出

計算例

下の例はこの画面の計算そのもので出しています。 入力を変えると同じ形で計算します。どの行がどの条文から来たかを、行ごとに出しています。

既定の入力

その年中の特定支出の額の合計額 1,200,000円/給与所得控除額 1,640,000円

項目金額条番号
給与所得控除額の2分の1820,000円所得税法第57条の2第1項
特定支出控除の額380,000円所得税法第57条の2第1項
  • 特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1に相当する金額を超えるとき、その超える部分の金額を控除する(所得税法第57条の2第1項)
  • 特定支出は7種類ある: 通勤のために必要な交通機関の利用等のための支出(所得税法第57条の2第2項第1号)、勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅行の支出(所得税法第57条の2第2項第2号)、転任に伴う転居のために通常必要と認められる支出(所得税法第57条の2第2項第3号)、職務の遂行に直接必要な技術又は知識を習得するための支出(所得税法第57条の2第2項第4号)、職務に直接必要な資格を取得するための支出(所得税法第57条の2第2項第5号)、単身赴任者の帰宅のための旅行に通常要する支出(所得税法第57条の2第2項第6号)、勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)(所得税法第57条の2第2項第7号)
条番号
所得税法第57条の2
適用
所得税法第57条の2第1項。給与所得を有する居住者
出どころ
所得税法(昭和四十年法律第三十三号)
適用年度
所得税法 2026-08-12 施行(改正版 340AC0000000033_20260812_508AC0000000064)
取得日
2026-08-31

この計算は 2026-08-31 に取った条文で動いています。 それより後に改正があれば、反映されていないことがあります。所得税法 で今の条文を確かめられます。

確かめ方 501点。2分の1の線のちょうど・直前・直後を含む1万円きざみで照合。額はどちらでも0円なので、ちょうど2分の1では「超えていない」と判定することも直接見た(3つの強さの違い

条文

所得税法(2026-08-12 施行)から取りました。1989字。

この計算が使う条文は、2024年4月1日時点から変わっています。 文字が変わったことだけを確かめています。答えが変わるかは別です(何が変わったか)。

所得税法第57条の2 を開く

(給与所得者の特定支出の控除の特例)第五十七条の二居住者が、各年において特定支出をした場合において、その年中の特定支出の額の合計額が第二十八条第二項(給与所得)に規定する給与所得控除額の二分の一に相当する金額を超えるときは、その年分の同項に規定する給与所得の金額は、同項及び同条第四項の規定にかかわらず、同条第二項の残額からその超える部分の金額を控除した金額とする。2前項に規定する特定支出とは、居住者の次に掲げる支出(その支出につきその者に係る第二十八条第一項に規定する給与等の支払をする者(以下この項において「給与等の支払者」という。)により補塡される部分があり、かつ、その補塡される部分につき所得税が課されない場合における当該補塡される部分及びその支出につき雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第十条第五項第一号(失業等給付)に規定する教育訓練給付金、母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和三十九年法律第百二十九号)第三十一条第一号(母子家庭自立支援給付金)に規定する母子家庭自立支援教育訓練給付金又は同法第三十一条の十(父子家庭自立支援給付金)において準用する同号に規定する父子家庭自立支援教育訓練給付金が支給される部分がある場合における当該支給される部分を除く。)をいう。一その者の通勤のために必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のための支出で、その通勤の経路及び方法がその者の通勤に係る運賃、時間、距離その他の事情に照らして最も経済的かつ合理的であることにつき財務省令で定めるところにより給与等の支払者により証明がされたもののうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定める支出二勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅行であることにつき財務省令で定めるところにより給与等の支払者により証明がされたものに通常要する支出で政令で定めるもの三転任に伴うものであることにつき財務省令で定めるところにより給与等の支払者により証明がされた転居のために通常必要であると認められる支出として政令で定めるもの四職務の遂行に直接必要な技術又は知識を習得することを目的として受講する研修(人の資格を取得するためのものを除く。)であることにつき、財務省令で定めるところにより、給与等の支払者により証明がされたもののための支出又はキャリアコンサルタント(職業能力開発促進法第三十条の三(業務)に規定するキャリアコンサルタントをいう。次号において同じ。)により証明がされたもののための支出(教育訓練(雇用保険法第六十条の二第一項(教育訓練給付金)に規定する教育訓練をいう。同号において同じ。)に係る部分に限る。)五人の資格を取得するための支出で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして、財務省令で定めるところにより、給与等の支払者により証明がされたもの又はキャリアコンサルタントにより証明がされたもの(教育訓練に係る部分に限る。)六転任に伴い生計を一にする配偶者との別居を常況とすることとなつた場合その他これに類する場合として政令で定める場合に該当することにつき財務省令で定めるところにより給与等の支払者により証明がされた場合におけるその者の勤務する場所又は居所とその配偶者その他の親族が居住する場所との間のその者の旅行に通常要する支出で政令で定めるもの七次に掲げる支出(当該支出の額の合計額が六十五万円を超える場合には、六十五万円までの支出に限る。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして財務省令で定めるところにより給与等の支払者により証明がされたものイ書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものとして政令で定めるもの及び制服、事務服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服で政令で定めるものを購入するための支出ロ交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出3第一項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書(次項において「申告書等」という。)に第一項の規定の適用を受ける旨及び同項に規定する特定支出の額の合計額の記載があり、かつ、前項各号に掲げるそれぞれの特定支出に関する明細書及びこれらの各号に規定する証明の書類の添付がある場合に限り、適用する。4第一項の規定の適用を受ける旨の記載がある申告書等を提出する場合には、同項に規定する特定支出の支出の事実及び支出した金額を証する書類として政令で定める書類を当該申告書等に添付し、又は当該申告書等の提出の際提示しなければならない。5前三項に定めるもののほか、第二項に規定する特定支出の範囲の細目その他第一項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

給与所得控除額の2分の1を「超える」部分だけ

特定支出控除は、給与所得控除額の2分の1を超えた分だけを引く。その年中の特定支出の額の合計額が、給与所得控除額の2分の1に相当する金額を超えるとき、その超える部分の金額を控除する(所得税法第57条の2第1項)。

ちょうど2分の1では引けない。 条文は「超えるとき」と書いている。

平成24年分までは、給与所得控除額そのものが線だった。 現行は2分の1である(所得税法第57条の2第1項)。線が下がったぶん、使える場面が広がっている。

給与所得の金額そのものが変わる

第1項は「その年分の同項に規定する給与所得の金額は、同項及び同条第4項の規定にかかわらず、同条第2項の残額からその超える部分の金額を控除した金額とする」と書いている(所得税法第57条の2第1項)。

所得控除ではない。給与所得の金額の計算(所得税法第28条第2項)が変わる。 所得税法第21条第1項でいえば第1号の段である。基礎控除など(第3号の段)より前になる。

給与所得者だけの制度

第1項は「居住者が、各年において特定支出をした場合」と書いているが、効果は給与所得の金額に及ぶ(所得税法第57条の2第1項)。

事業所得や雑所得には及ばない。 それらは必要経費(所得税法第37条第1項)で処理する。

特定支出は7種類

支出条番号
通勤のために必要な交通機関の利用等のための支出所得税法第57条の2第2項第1号
勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅行の支出所得税法第57条の2第2項第2号
転任に伴う転居のために通常必要と認められる支出所得税法第57条の2第2項第3号
職務の遂行に直接必要な技術又は知識を習得するための支出所得税法第57条の2第2項第4号
職務に直接必要な資格を取得するための支出所得税法第57条の2第2項第5号
単身赴任者の帰宅のための旅行に通常要する支出所得税法第57条の2第2項第6号
勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)所得税法第57条の2第2項第7号

特定支出は年単位で合計する

第1項は「その年中の特定支出の額の合計額」と書いている(所得税法第57条の2第1項)。

7つの号の支出を合計して、給与所得控除額の2分の1と比べる。 号ごとに判定するのではない。

補塡される部分は特定支出にならない

第2項の柱書が、2つを除いている(所得税法第57条の2第2項)。

除かれるもの中身
給与等の支払者により補塡される部分かつ、その補塡される部分につき所得税が課されない場合
給付金が支給される部分雇用保険法第10条第5項第1号の教育訓練給付金母子及び父子並びに寡婦福祉法第31条第1号の母子家庭自立支援教育訓練給付金母子及び父子並びに寡婦福祉法第31条の10で準用する父子家庭自立支援教育訓練給付金

会社が出した分は引けない。 さらに、その補塡が課税されている場合は除かれない(つまり引ける)。「かつ」で条件が重なっている。

証明が要る

第2項の各号が、それぞれ「給与等の支払者により証明がされたもの」を要件にしている(所得税法第57条の2第2項第1号〜第7号)。

7つの号すべてに証明の要件がある。 自分の判断だけでは引けない。

勤務必要経費には65万円の上限がある

第7号のかっこ書きに上限がある(所得税法第57条の2第2項第7号)。図書費・衣服費・交際費等の合計が65万円を超える場合、65万円までである。

他の号には上限が無い。 第7号だけである。この道具は上限の判定をしていない。

通勤費の範囲は政令で決まる

第1号は「一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定める支出」と書いている(所得税法第57条の2第2項第1号)。

経路と方法が「最も経済的かつ合理的である」ことについて、財務省令で定めるところにより給与等の支払者の証明が要る(同号)。

非課税の通勤手当(所得税法第9条第1項第5号)とは別の話である。 非課税の通勤手当は収入に入らないが、特定支出は支出の側である。

給与所得控除額との関係

線になるのは給与所得控除額の2分の1である(所得税法第57条の2第1項)。

給与所得控除額は所得税法第28条第3項または第4項で決まる。 給与等の収入金額が660万円未満なら別表第五が優先する(同条第4項)。給与所得控除を参照。

適用を受けるための手続

所得税法第57条の2第3項に、確定申告書への記載と証明書類の添付の定めがある。

第1項の計算だけでは適用されない。 手続の要件が別の項にある。

よくある取り違え

1. 「特定支出控除は所得控除」

給与所得の金額の計算が変わる(所得税法第57条の2第1項)。段が違う。

2. 「全額が引ける」

給与所得控除額の2分の1を超える部分だけである(所得税法第57条の2第1項)。

3. 「会社が出した分も入れられる」

補塡される部分は除かれる(所得税法第57条の2第2項柱書)。

4. 「自分で判断して引ける」

給与等の支払者の証明が要る(所得税法第57条の2第2項各号)。

5. 「7種類すべてに上限がある」

上限があるのは第7号だけである(所得税法第57条の2第2項第7号かっこ書き)。

よくある質問

確定申告が要りますか

所得税法第57条の2第3項に、確定申告書への記載と証明書類の添付の定めがある。 年末調整では処理されない。

資格取得費は何でも入りますか

「職務に直接必要な資格を取得するための支出」である(所得税法第57条の2第2項第5号)。

単身赴任の帰宅費用は

第6号にある(所得税法第57条の2第2項第6号)。

通勤手当をもらっていても使えますか

補塡される部分は除かれる(所得税法第57条の2第2項柱書)。手当で賄われた分は特定支出にならない。

給与が2か所ある場合は

第1項は「その年中の特定支出の額の合計額」と書いている(所得税法第57条の2第1項)。

住民税でも同じですか

地方税法は所得税法の計算の例による形をとっている。 給与所得の金額そのものが所得税法第57条の2で変わる。

この計算が扱っていないこと

  • 勤務必要経費の65万円の上限(所得税法第57条の2第2項第7号かっこ書き)
  • 給与等の支払者の証明(同項各号)
  • 補塡される部分の判定(同項柱書)
  • 給与所得控除額そのもの(所得税法第28条第3項・第4項)。給与所得控除で計算した額を入れる

数字をどう確かめたかは検算の方法にある。

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