減価償却とは、長く使う資産の取得価額を、使う期間に分けて必要経費または損金にしていく仕組みである(所得税法第49条第1項、法人税法第31条第1項)。分ける年数は資産ごとに法令で決まっており、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表第一から別表第六に定められている。
このページの計算は、その省令の別表から取った償却率をそのまま使っている。画面に出る数値には、どの条文のどの別表から来たかを1行ずつ付けてある。
定額法と定率法で何が違うか
定額法は、取得価額に定額法の償却率を掛ける。償却費の額は原則として毎年同じになる。定率法は、未償却残高に定率法の償却率を掛ける。償却費の額は初めの年ほど大きく、年とともに小さくなる。どちらの償却率も耐用年数省令の別表で決まっている。定額法は別表第八(耐用年数省令第5条第1号)、定率法は別表第九または別表第十(同条第2号)である。
個人事業主は原則として定額法で計算する。所轄の税務署へ届出書を出すと定率法を選べる(所得税法施行令第120条の2)。法人は資産の種類により選べるが、建物・建物附属設備・構築物は定額法のみである。
償却率はどの別表で決まるか
取得した時期によって、使う別表が変わる。
| 取得した時期 | 償却方法 | 別表 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 平成19年3月31日以前 | 旧定額法・旧定率法 | 別表第七 | 耐用年数省令第4条 |
| 平成19年4月1日以後 | 定額法 | 別表第八 | 耐用年数省令第5条第1号 |
| 平成19年4月1日〜平成24年3月31日 | 定率法(250%) | 別表第九 | 耐用年数省令第5条第2号イ |
| 平成24年4月1日以後 | 定率法(200%) | 別表第十 | 耐用年数省令第5条第2号ロ |
別表第七から別表第十は、いずれも耐用年数2年から100年までの99行で構成されている。
定率法の「償却保証額」と「改定償却率」
定率法では、未償却残高に償却率を掛けた金額を「調整前償却額」という。この金額が「償却保証額」に満たなくなった年から、計算のしかたが変わる。
償却保証額は、取得価額に保証率を掛けた金額である。切り替わった年以後は、その年の期首帳簿価額(改定取得価額)に改定償却率を掛けた金額が償却費になる。保証率と改定償却率も、償却率と同じ別表に載っている。
取得価額100万円・耐用年数10年・200%定率法の場合を見る。償却率0.200、改定償却率0.250、保証率0.06552である(耐用年数省令第5条第2号ロ・別表第十)。償却保証額は 1,000,000 × 0.06552 = 65,520円となる。この例では7年目から、改定取得価額に改定償却率を掛ける形に切り替わる。
最後に1円を残す
平成19年4月1日以後に取得した資産は、償却可能限度額と残存価額が廃止され、1円まで償却する(所得税法第49条第1項、所得税法施行令第134条)。使い続けている限り、帳簿には備忘価額として1円が残る。上の計算でも、最終年の償却額はその1円を残す形になっている。
年の途中で使い始めた場合
資産を年の中途で取得または取壊しをした場合は、1年分の金額を12で除し、その年に事業で使っていた月数を掛ける。1か月に満たない端数は1か月として数える(耐用年数省令第4条第3項)。
このページでは「事業供用月数」で指定できる。指定した月数は初年度にだけ効く。
端数が出たときの処理
国税庁の確定申告書等作成コーナーは、減価償却費の計算で小数点以下の端数が生じた場合に切上げ処理を行っている。たとえば取得価額3,333,333円の95%相当額は3,166,666.35となり、切上げて3,166,667円として扱われる。
このページの計算も切上げに揃えてある。
取得価額による分岐
取得価額によっては、減価償却をせずにその年の必要経費にできる。
| 取得価額 | 扱い | 条番号 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | その年に全額を必要経費にできる | 所得税法施行令第138条 |
| 20万円未満 | 一括償却資産として3年間で均等償却できる | 所得税法施行令第139条 |
| 40万円未満(青色申告) | 少額減価償却資産の特例で全額を必要経費にできる | 租税特別措置法第28条の2 |
少額減価償却資産の特例の金額は、2026年4月1日から40万円未満になった。それ以前に取得した資産は30万円未満である。適用期限も令和8年3月31日から令和11年3月31日に延びている。年間の合計額は300万円が上限である(同条)。法人は租税特別措置法第67条の5に同じ趣旨の規定がある。
中古で取得した場合
中古資産は、使用可能期間の年数を見積もる方法か、簡便法で耐用年数を算定できる(耐用年数省令第3条第1項)。簡便法は次のとおりである(同項第2号)。
簡便法の算式は次のとおりである。
| 経過の状態 | 算定する年数 | 条番号 |
|---|---|---|
| 法定耐用年数の全部を経過 | 法定耐用年数 × 20% | 耐用年数省令第3条第1項第2号イ |
| 一部を経過 | (法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20% | 耐用年数省令第3条第1項第2号ロ |
いずれも1年未満の端数は切り捨て、2年に満たないときは2年とする(耐用年数省令第3条第1項第2号)。事業の用に供するために支出した資本的支出の額が取得価額の50%を超えるときは、簡便法は使えない(同項ただし書)。
この計算を何と突き合わせているか
このページの数値は、e-Gov法令検索の法令APIから取得した耐用年数省令の別表をそのまま使っている。取得日と施行日は各ページの下部に出してある。
そのうえで、国税庁が公開している計算例と機械で突き合わせている。取得価額100万円・耐用年数10年の定額法と200%定率法について、10年分すべての償却額が一致することを、公開のたびに確かめている。旧定額法・旧定率法の償却率、中古資産の簡便法、端数の切上げについても同じ関門を通している。
定率法の定義は、1つの文の中に3段ある
所得税法施行令第120条の2第1項第1号イ(2)が、定率法を1つの文で定義している。
| 段 | 何をするか | 条番号 |
|---|---|---|
| 1 | 未償却残高に耐用年数に応じた償却率を掛ける | 所得税法施行令第120条の2第1項第1号イ(2) |
| 2 | その金額が償却保証額に満たない場合は、次の段に移る | 同号イ(2)かっこ書き |
| 3 | 改定取得価額に改定償却率を掛けた金額を、その後毎年同一の額として償却する | 同号イ(2)かっこ書き |
「償却保証額に満たない場合」で切り替わる。 切り替わった後は定額法と同じ形になり、毎年同じ額を引く。
償却率は「1から定額法償却率に2を乗じて計算した割合を控除した割合で逓減するように」定められている(同号イ(2))。平成24年3月31日以前に取得した資産は2ではなく2.5である(同号イ(2)かっこ書き)。
建物は定額法しか選べない
第1号イは「平成28年3月31日以前に取得された減価償却資産(建物を除く)」について定額法と定率法を並べ、ロで「イに掲げる減価償却資産以外の減価償却資産」を定額法としている(所得税法施行令第120条の2第1項第1号)。
建物は最初からイの対象外である(所得税法施行令第120条の2第1項第1号イ)。さらに平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備と構築物も、ロに落ちて定額法になる(同号ロ)。
年の途中で業務の用に供したら月割り
年の途中で業務の用に供した場合は、月割りになる。その年分の償却費の額を12で除し、業務の用に供した日からその年12月31日までの期間の月数を乗じる(所得税法施行令第132条第1項第1号イ)。
日割りではない。月数である。
取替法・生産高比例法などは月割りではなく採掘数量で按分する(同号ロ)。この道具は定額法・定率法・旧定額法・旧定率法を扱っている。
旧定額法・旧定率法は取得の時期で分かれる
所得税法施行令第120条の2は「平成19年4月1日以後に取得された減価償却資産」を対象にしている。
それより前に取得したものは所得税法施行令第120条にあり、旧定額法・旧定率法になる。 条が別である。
償却率は省令の別表から取る
償却率は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第七から別表第十にある。改定償却率と保証率があるのは、別表第九と別表第十だけである。
| 別表 | 何 | 条番号 |
|---|---|---|
| 別表第七 | 平成19年3月31日以前に取得した資産の償却率(旧定額法・旧定率法) | 減価償却資産の耐用年数等に関する省令第4条 |
| 別表第八 | 平成19年4月1日以後に取得した資産の定額法の償却率 | 減価償却資産の耐用年数等に関する省令第5条第1号 |
| 別表第九 | 平成19年4月1日から平成24年3月31日までに取得した資産の定率法の償却率・改定償却率・保証率 | 減価償却資産の耐用年数等に関する省令第5条第2号イ |
| 別表第十 | 平成24年4月1日以後に取得した資産の定率法の償却率・改定償却率・保証率 | 減価償却資産の耐用年数等に関する省令第5条第2号ロ |
この道具は別表を法令から機械で取り出して使っている。 書き写していない。償却率表を参照。
1円まで償却する
償却可能限度額の考え方は所得税法施行令第134条にある。 定額法・定率法では備忘価額1円を残す。
よくある取り違え
1. 「定率法は最後まで同じ率で減る」
償却保証額に満たなくなった年から、改定償却率による定額の償却に切り替わる(所得税法施行令第120条の2第1項第1号イ(2)かっこ書き)。
2. 「建物でも定率法を選べる」
選べない(所得税法施行令第120条の2第1項第1号イ・ロ)。
3. 「年の途中なら日割り」
月割りである(所得税法施行令第132条第1項第1号イ)。
4. 「定率法の償却率は定額法の2倍」
「1から定額法償却率に2を乗じた割合を控除した割合で逓減するように」定められた率である(所得税法施行令第120条の2第1項第1号イ(2))。2倍そのものではない。
5. 「償却率は国税庁の表」
省令の別表である(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第七〜第十)。
よくある質問
償却方法はどう選びますか
所得税法施行令第123条に届出の定めがある。 届け出なければ法定の償却方法(所得税法施行令第125条)になる。
資本的支出をしたらどうなりますか
所得税法施行令第127条に定めがある。
中古で買った場合の耐用年数は
減価償却資産の耐用年数等に関する省令第3条にある。中古資産の耐用年数を参照。
少額のものはどうなりますか
所得税法施行令第138条・第139条にある。取得価額いくらから減価償却が必要かを参照。
法人でも同じですか
法人税法施行令第48条の2に同じ形の定めがある。 条は別である。
償却費は必ず計上しなければなりませんか
所得税法第49条第1項は「償却費として……必要経費に算入する金額は……計算した金額とする」と書いている。 法人税の任意償却とは書き方が違う。
この計算が扱っていないこと
- 生産高比例法・取替法(所得税法施行令第120条の2第1項第3号以下)
- 償却方法の届出(所得税法施行令第123条)
- 資本的支出(所得税法施行令第127条)
- 法人の側(法人税法施行令第48条の2)
償却が済んでも、機械や器具備品は償却資産として固定資産税・都市計画税の対象である(地方税法第341条第4号)。所得税とは別の制度である。