けんざん制度で決まった金額を、条番号つきで計算する

純損失の繰越控除

純損失の繰越控除とは、前年以前の各年において生じた純損失の金額を、その後の年の総所得金額などから差し引く仕組みである(所得税法第70条)。

繰り越せるのは前年以前3年内です(所得税法第70条第1項)。白色申告でも、変動所得の損失と被災事業用資産の損失は繰り越せます(同条第2項)。

計算する

純損失を引く前の額(所得税法第70条第1項)
古い年から順に引く(所得税法第70条第1項)

計算例

下の例はこの画面の計算そのもので出しています。 入力を変えると同じ形で計算します。どの行がどの条文から来たかを、行ごとに出しています。

既定の入力

その年の総所得金額等 5,000,000円/3年前に生じた純損失 2,000,000円/2年前に生じた純損失 1,000,000円/前年に生じた純損失 1,500,000円

項目金額条番号
3年前に生じた純損失から引く額2,000,000円所得税法第70条第1項
2年前に生じた純損失から引く額1,000,000円所得税法第70条第1項
1年前に生じた純損失から引く額1,500,000円所得税法第70条第1項
純損失を引いた後の総所得金額等500,000円所得税法第70条第1項
  • その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る(所得税法第70条第1項かっこ書き)
  • 白色申告でも繰り越せるもの: 変動所得の金額の計算上生じた損失の金額(所得税法第70条第2項第1号)、被災事業用資産の損失の金額(所得税法第70条第2項第2号)
  • 損失が生じた年分の確定申告書を提出し、その後において連続して確定申告書を提出している場合に限り適用する(所得税法第70条第4項)
条番号
所得税法第70条
適用
所得税法第70条第1項。確定申告書を提出する居住者
出どころ
所得税法(昭和四十年法律第三十三号)
適用年度
所得税法 2026-08-12 施行(改正版 340AC0000000033_20260812_508AC0000000064)
取得日
2026-08-31

この計算は 2026-08-31 に取った条文で動いています。 それより後に改正があれば、反映されていないことがあります。所得税法 で今の条文を確かめられます。

確かめ方 625点。3年ぶんの損失 × 所得の組み合わせで、控除額と引ききれない額の合計が損失の合計と一致することを照合(3つの強さの違い

どこまでを計算しているか

控除の順序は政令に委ねられている(同条第1項「政令で定めるところにより」)。この道具は古い年に生じた損失から順に引いている。

条文

所得税法(2026-08-12 施行)から取りました。817字。

この計算が使う条文は、2024年4月1日時点と1字も違いません。 比べたのは条文の文字だけです。答えが同じことまでは確かめていません(比べ方)。

所得税法第70条 を開く

(純損失の繰越控除)第七十条確定申告書を提出する居住者のその年の前年以前三年内の各年(その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る。)において生じた純損失の金額(この項の規定により前年以前において控除されたもの及び第百四十二条第二項(純損失の繰戻しによる還付)の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。)がある場合には、当該純損失の金額に相当する金額は、政令で定めるところにより、当該確定申告書に係る年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算上控除する。2確定申告書を提出する居住者のその年の前年以前三年内の各年において生じた純損失の金額(前項の規定の適用を受けるもの及び第百四十二条第二項の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。)のうち、当該各年において生じた次に掲げる損失の金額に係るもので政令で定めるものがあるときは、当該政令で定める純損失の金額に相当する金額は、政令で定めるところにより、当該申告書に係る年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算上控除する。一変動所得の金額の計算上生じた損失の金額二被災事業用資産の損失の金額3前項第二号に掲げる被災事業用資産の損失の金額とは、棚卸資産又は第五十一条第一項若しくは第三項(資産損失の必要経費算入)に規定する資産の災害による損失の金額(その災害に関連するやむを得ない支出で政令で定めるものの金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補塡される部分の金額を除く。)で前項第一号に掲げる損失の金額に該当しないものをいう。4第一項又は第二項の規定は、これらの規定に規定する居住者が純損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出し、かつ、それぞれその後において連続して確定申告書を提出している場合に限り、適用する。5第一項及び第二項の規定による控除は、純損失の繰越控除という。

繰り越せるのは前年以前3年内

その年の前年以前3年内の各年において生じた純損失の金額を、その年の総所得金額等の計算上控除する(所得税法第70条第1項)。

4年前の損失は引けない(所得税法第70条第1項)。

第1項と第2項で、範囲が違う

所得税法第70条は、繰り越せるものを2つの項に分けて書いている。

何を繰り越せるか青色申告の要件条番号
第1項純損失の金額要る(かっこ書き)所得税法第70条第1項
第2項変動所得の損失と被災事業用資産の損失に係るもので政令で定めるもの書かれていない所得税法第70条第2項

第1項のかっこ書きは「その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る」と書いている。損失が生じた年が青色でなければ、第1項では引けない。

白色でも繰り越せるもの条番号
変動所得の金額の計算上生じた損失の金額所得税法第70条第2項第1号
被災事業用資産の損失の金額所得税法第70条第2項第2号

第2項は「政令で定めるもの」で範囲を絞っている(所得税法第70条第2項)。白色申告でも繰り越せる範囲は、政令で決まる。

被災事業用資産の損失とは何か

第3項が定義している(所得税法第70条第3項)。

棚卸資産又は第五十一条第一項若しくは第三項(資産損失の必要経費算入)に規定する資産の災害による損失の金額(その災害に関連するやむを得ない支出で政令で定めるものの金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補塡される部分の金額を除く。)で前項第一号に掲げる損失の金額に該当しないもの

変動所得の損失(第2項第1号)に当たるものは除かれる。 2つの号は重ならないように書かれている。

雑損控除の対象からは外れている

雑損控除は、被災事業用資産を対象から除いている所得税法第72条第1項・同法第70条第3項)。事業用の資産の災害損失は、雑損控除ではなく純損失の繰越控除の側で扱う。雑損控除を参照。

連続して申告書を出していること

第4項が適用の要件を書いている(所得税法第70条第4項)。

これらの規定に規定する居住者が純損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出し、かつ、それぞれその後において連続して確定申告書を提出している場合に限り、適用する

2つとも要る(所得税法第70条第4項)。損失が生じた年の申告と、その後の連続した申告である。1年でも出さない年があると、そこで切れる(同項)。

引く順序は政令に委ねられている

第1項は「政令で定めるところにより」と書いている(所得税法第70条第1項)。順序そのものは所得税法第70条には無い。

この道具は古い年に生じた損失から順に引いている。 3年で期限が来るのが古い損失だからである。上の計算は、年ごとにいくら引いたかと、引ききれなかった額を出している。

繰戻し還付は別の条にある

純損失の繰戻しによる還付は所得税法第142条にある。 前年に繰り戻して所得税の還付を受ける方法で、繰越しとは別である。

第1項と第2項のかっこ書きが、第142条第2項の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となったものを除いている(所得税法第70条第1項・第2項)。繰戻しに使った分は繰り越せない。

雑損失の繰越控除は別の条

繰越し年数条番号
純損失前年以前3年内所得税法第70条第1項
雑損失前年以前3年内所得税法第71条第1項

年数は同じだが、条は別である。 この道具は純損失の側だけを扱っている。

端数の扱い

所得税法第70条は端数について何も書いていない。

よくある取り違え

1. 「白色申告では繰り越せない」

第2項に2つの例外がある(所得税法第70条第2項第1号・第2号)。変動所得の損失と被災事業用資産の損失は、政令で定める範囲で繰り越せる。

2. 「5年繰り越せる」

3年である(所得税法第70条第1項)。

3. 「損失が出た年だけ申告すればよい」

その後も連続して申告書を提出している必要がある(所得税法第70条第4項)。

4. 「事業用資産の災害損失も雑損控除」

除かれる(所得税法第72条第1項・同法第70条第3項)。

5. 「繰戻しと繰越しを両方使える」

繰戻しに使った分は繰り越せない(所得税法第70条第1項かっこ書き)。

よくある質問

純損失とは何ですか

所得税法第2条第1項第25号に定義がある。 損益通算(同法第69条)をしてもなお残る損失である。

3年を過ぎた損失はどうなりますか

引けない(所得税法第70条第1項)。上の計算は引ききれなかった額を出している。

どの所得から引きますか

総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算上控除する(所得税法第70条第1項)。

法人の欠損金と同じですか

別の制度である。 法人税は法人税法第57条にあり、年数も要件も違う。欠損金の繰越控除を参照。

雑損失も同じ道具で計算できますか

この道具は純損失だけである。 雑損失の繰越控除は所得税法第71条にある。

引く順序は選べますか

政令で定めるところによる(所得税法第70条第1項)。この道具は古い年から引いている。

この計算が扱っていないこと

  • 純損失の繰戻しによる還付(所得税法第142条)。前年に繰り戻して還付を受ける方法
  • 雑損失の繰越控除(所得税法第71条)
  • 第2項の政令で定める範囲
  • 損益通算所得税法第69条

雑損控除そのものは雑損控除にある。数字をどう確かめたかは検算の方法にある。

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同じ束のものと、同じ法令によるものを並べています。

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