一時所得は、条文が3つの条件を重ねて絞り込んでいる(所得税法第34条第1項)。まず、利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡の各所得以外の所得であること。次に、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であること。最後に、労務その他の役務または資産の譲渡の対価としての性質を有しないことである。
計算は3段階になる
一時所得の金額は、総収入金額から、その収入を得るために支出した金額の合計額を引き、その残額から一時所得の特別控除額を引いた金額である(所得税法第34条第2項)。
| 順 | 計算 | 条番号 |
|---|---|---|
| 1 | 総収入金額 − 支出した金額 = 残額 | 所得税法第34条第2項 |
| 2 | 残額 − 特別控除額 = 一時所得の金額 | 同項 |
| 3 | 一時所得の金額 × 2分の1 = 総所得金額に入る額 | 所得税法第22条第2項第2号 |
2分の1は第34条にない
「一時所得は2分の1」という扱いは、所得税法第34条には書かれていない。
所得税法第22条第2項第2号は、一時所得の金額と、譲渡所得のうち第33条第3項第2号に掲げる所得に係る部分とを合計する。総所得金額に入るのは、その合計額の2分の1である。同じ号が長期の譲渡所得にも効いている。
特別控除額は50万円だが、残額が少なければ残額
特別控除額は50万円である。ただし残額が50万円に満たない場合は、その残額とする(所得税法第34条第3項)。
したがって残額が30万円なら特別控除額も30万円になり、一時所得の金額は0円になる(所得税法第34条第3項)。一時所得がマイナスになることはない。
引ける支出は限られている
支出した金額は、その収入を生じた行為をするため、またはその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る(所得税法第34条第2項かっこ書き)。
端数の扱いは条文にない
所得税法第22条第2項第2号には、2分の1にしたときの端数の定めが無い。このページは円未満を切り捨てている。これは条文から出したものではない。
一時所得は総所得金額に入り、基礎控除などの所得控除を引いた残額に所得税の税率を掛ける(所得税法第89条第2項)。
2分の1は、一時所得の計算ではなく総所得金額の計算で効く
所得税法第34条第2項は、2分の1にすることを書いていない。
| 段 | 何をするか | 条番号 |
|---|---|---|
| 1 | 総収入金額 − その収入を得るために支出した金額 | 所得税法第34条第2項 |
| 2 | 残額 − 特別控除額(50万円) | 所得税法第34条第2項・第3項 |
| 3 | 総所得金額に入れるときに2分の1にする | 所得税法第22条第2項第2号 |
2分の1は所得税法第22条第2項第2号にある。 一時所得の金額そのものは2分の1にしない。「一時所得の金額」と「総所得金額に入る額」は別物である。
このため、合計所得金額(所得税法第2条第1項第30号)を出すときも、2分の1にした後の額が入る。 基礎控除や配偶者控除の段の判定に効く。
引けるのは「直接要した金額」に限られる
第2項のかっこ書きは「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」と書いている(所得税法第34条第2項)。
支出のすべてが引けるわけではない。 直接要したものに限られる。
特別控除は50万円だが、残額が少なければ残額まで
一時所得の特別控除額は50万円である。ただし残額が50万円に満たない場合には、当該残額とする(所得税法第34条第3項)。
残額が30万円なら特別控除も30万円で、一時所得の金額は0円になる。負にはならない。 山林所得の特別控除(所得税法第32条第4項)と同じ書き方である。山林所得と5分5乗を参照。
何が一時所得か
第1項は引き算で定義している(所得税法第34条第1項)。
利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの
3つの条件がある。
- 8種類の所得のいずれにも当たらない
- 営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではない
- 労務その他の役務または資産の譲渡の対価としての性質を有しない
この道具は判定をしていない。金額を入れてもらう形にしている。
端数の扱い
所得税法第34条は端数について何も書いていない。 端数が出るのは、この後の課税総所得金額の段階である(国税通則法第118条第1項)。
よくある取り違え
1. 「一時所得は2分の1になる」
一時所得の金額そのものは2分の1にしない(所得税法第34条第2項)。2分の1は総所得金額に入れるときである(同法第22条第2項第2号)。
2. 「50万円を超えないと課税されない」
特別控除が50万円である(所得税法第34条第3項)。超えた部分が一時所得の金額になり、その2分の1が総所得金額に入る(同法第22条第2項第2号)。
3. 「支出はすべて引ける」
直接要した金額に限られる(所得税法第34条第2項かっこ書き)。
4. 「特別控除は必ず50万円」
残額が50万円に満たなければ、その残額である(所得税法第34条第3項)。
5. 「一時所得は分離課税」
総所得金額に入る(所得税法第22条第2項第2号)。分離課税ではない。
よくある質問
複数の一時所得がある場合は
第2項は「その年中の一時所得に係る総収入金額」と書いている(所得税法第34条第2項)。合計して1回だけ特別控除を引く。
損失が出た場合はどうなりますか
第3項が、残額が50万円に満たない場合を書いている(所得税法第34条第3項)。一時所得の金額は0円までで、負にはならない。
譲渡所得との違いは何ですか
譲渡所得は資産の譲渡による所得である(所得税法第33条第1項)。一時所得の定義は「資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」なので(同法第34条第1項)、譲渡所得に当たるものは一時所得にならない。譲渡所得(総合課税)を参照。
総所得金額のどこに入りますか
所得税法第22条第2項第2号の側である。 第1号(利子・配当・不動産・事業・給与・譲渡(短期)・雑)とは別に集計し、第2号の合計の2分の1を足す。
源泉徴収されている場合は
所得税法第34条には源泉徴収の定めが無い。 源泉徴収された税額は所得税額から引く(所得税法第120条第1項第5号)。
一時所得にも損益通算はありますか
所得税法第69条の損益通算の対象になるかは、同条で決まる。 第22条第2項第2号のかっこ書きが「第69条の規定の適用がある場合には、その適用後の金額」と書いている。
所得税の計算のどこに入るか
一時所得の金額は、所得税法第21条第1項第1号の段で計算する。総所得金額に入れるのは第2号の段である(同法第22条第2項第2号)。
基礎控除などの所得控除は第3号の段で、その後に引く。基礎控除を参照。
この計算が扱っていないこと
- 一時所得に当たるかどうかの判定(所得税法第34条第1項)
- 直接要した金額に当たるかどうかの判定(同条第2項かっこ書き)
- 損益通算(所得税法第69条)