賞与について源泉徴収する所得税は、前月の社会保険料等控除後の給与等の金額と扶養親族等の数から率を引き、その率を賞与の金額に掛けて求める(所得税法第186条第1項・別表第四)。
率は前月の給与で決まる。賞与の額では決まらない。
率の引き方
別表第四は、率ごとに前月の給与の範囲を定めている(所得税法別表第四)。範囲は千円単位で書かれている。
| 甲欄 | 乙欄 | 条番号 | |
|---|---|---|---|
| 使う人 | 扶養控除等申告書を提出している | 提出していない | 所得税法第186条第1項 |
| 扶養親族等の数 | 0人から7人以上まで欄が分かれる | 欄が分かれない | 所得税法別表第四 |
| 率の段 | 21段(0%から45%まで) | 5段(10%から45%まで) | 同表 |
乙欄には0%の段が無い。 前月の給与がいくら少なくても、10%から始まる(所得税法別表第四)。
別表第四の甲欄により求めた率を、その賞与の金額に乗じる(所得税法第186条第1項第1号イ)。率を引くのに使うのは、前月中に支払った通常の給与等の金額である。 賞与の額そのものではない。
甲欄と乙欄
所得税法第186条第1項は賞与を2つの号に分けており、扶養控除等申告書の提出を経由した支払者からのものだけが甲欄になる。
| 欄 | どんな場合 | 条番号 |
|---|---|---|
| 甲欄 | 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者に、その提出を経由した支払者が支払う賞与 | 所得税法第186条第1項第1号 |
| 乙欄 | それ以外 | 同項第2号 |
乙欄も同じ構造である。 前月の通常の給与等があれば別表第四の乙欄、なければ別表第二の乙欄を使う(所得税法第186条第1項第2号イ・ロ)。
賞与とは何か
第1項が「賞与(賞与の性質を有する給与を含む。)」と書いている(所得税法第186条第1項)。
名前が賞与でなくても、性質が賞与であれば含まれる。
前月の給与が無い場合は、別の計算になる
第1号ロが、前月中に通常の給与等がない場合を定めている(所得税法第186条第1項第1号ロ)。
| 段 | 何をするか |
|---|---|
| 1 | 賞与の金額の6分の1(計算の基礎となった期間が6か月を超える場合は12分の1) |
| 2 | その金額について、別表第二(月額表)の甲欄の税額を引く |
| 3 | その税額に6(6か月を超える場合は12)を乗じる |
別表第四ではなく別表第二を使う。 賞与を月給に均して月額表を引き、その税額を戻す形である。
この道具は、前月の給与に0を入れるとこの計算をする。乙欄なら別表第二の乙欄を使う(所得税法第186条第1項第2号ロ)。
6か月という線
賞与の金額の計算の基礎となった期間が6か月を超える場合、6分の1ではなく12分の1にし、6倍ではなく12倍する(所得税法第186条第1項第1号ロかっこ書き)。
年1回の賞与など、対象期間が長いものへの調整である。
前月の給与の10倍を超える場合は、第2項による
賞与の金額が前月中の通常の給与等の金額の10倍に相当する金額を超える場合、第2項が別の計算方法を定めている(所得税法第186条第2項)。
賞与の6分の1と前月の給与の合計額に別表第二を当て、前月の給与だけの税額との差に6を掛ける(同項)。
この道具は、賞与が前月の給与の10倍を超えるとこの計算をする。国税庁 No.2523 の計算例(前月の給与166,531円・賞与1,668,062円・扶養親族等1人・6か月)では、この道具の答えも国税庁と同じ87,540円になる。
国税庁の答えと違うことがある。国税庁の計算例は、復興特別所得税を含めて10円単位にした告示の税額表を使う(復興財確法第29条第1項第1号)。この道具は、別表第二の所得税に復興特別所得税を足し、合計で1円未満を切り捨てる(復興財確法第28条第2項・第31条第2項)。国税庁 No.2523 の、前月の給与が無い例(賞与769,300円・扶養親族等0人)では、国税庁の7,800円に対して、この道具は7,780円になる。
復興特別所得税は別表に含まれない
別表第四から出るのは率であり、その率を掛けて出るのは所得税だけである。 実際に源泉徴収されるのは、これに復興特別所得税を足した額である。
| 順 | 中身 | 条番号 |
|---|---|---|
| 1 | 別表第四の率を賞与の金額に掛ける | 所得税法第186条第1項・別表第四 |
| 2 | その2.1%が復興特別所得税 | 復興財確法第28条第2項 |
| 3 | 合計額の1円未満を切り捨てる | 復興財確法第31条第2項 |
源泉徴収の義務そのものは、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法第28条第1項にある。
これは給与の源泉徴収税額と同じ形である。
表そのものは書き写していない
別表第四は甲欄が21段、それぞれに扶養親族等8欄ぶんの範囲がある。168マスある。
このページは、e-Gov法令検索の法令APIから取った別表第四を機械でそのまま取り出して使っている。取り出したあとに次を確かめている。
- 甲欄8欄すべてで、前月の給与の範囲にすき間が無いこと
- 率が段ごとに上がっていること
- 乙欄の段にすき間が無いこと
- 168マスすべてを引き当てて、表と一致すること
- 扶養親族等が増えて率が上がる点が無いこと
よくある取り違え
1. 「賞与の額から率を引く」
前月の通常の給与等の金額から引く(所得税法第186条第1項第1号イ)。
2. 「前月の給与が無ければ賞与に率を掛けない」
6分の1にして月額表を引き、6倍する(所得税法第186条第1項第1号ロ)。
3. 「6か月を超えても6分の1」
12分の1にして12倍する(所得税法第186条第1項第1号ロかっこ書き)。
4. 「別表第四は国税庁の表」
所得税法の別表である。
5. 「賞与の名前でなければ対象外」
賞与の性質を有する給与を含む(所得税法第186条第1項)。
6. 「別表第四の率に復興特別所得税が入っている」
入っていない(所得税法別表第四)。所得税額の2.1%を別に足す(復興財確法第28条第2項)。
よくある質問
社会保険料はどう扱いますか
賞与からも前月の給与からも、社会保険料と小規模企業共済等掛金を引いた残りの額で計算する。引いた残りの額の給与等を支払ったものとみなす、と定めている(所得税法第188条)。この道具の2つの入力欄は、どちらも引いた後の額を入れる。
年末調整で精算されますか
年最後の給与を支払うときに、1年分の税額と源泉徴収した額の過不足を精算する(所得税法第190条)。賞与から源泉徴収した所得税も、この合計に入る(同条第1号)。年末調整をする月に賞与を支払う場合は、見込まれる不足額を賞与の税額に足すこともできる(所得税法第186条第3項)。この道具は年末調整を計算しない。
前月に給与が無い月に賞与を出したら
別表第四の率は使わず、賞与の6分の1に別表第二(月額表)を当てた税額を6倍する(所得税法第186条第1項第1号ロ)。前月の給与に0を入れると、この道具はその計算をする。ただし、通常の給与の支給期が2か月ごとなど月の整数倍の期間ごとと定められていて、前月に支払が無いだけの場合は、別表第四を使う(同号イのかっこ書き)。
賞与が前月の給与の10倍を超えたら
賞与の6分の1と前月の給与の合計額に別表第二を当てた税額から、前月の給与だけに当てた税額を引き、その差を6倍する(所得税法第186条第2項)。10倍を「超える」ときなので、ちょうど10倍なら別表第四の率を使う(同項)。
「6か月を超える」はどう決まりますか
賞与の金額の計算の基礎になった期間が6か月を超えるかで決まる(所得税法第186条第1項第1号ロのかっこ書き)。超えるときは12分の1にして12倍する。この区別が効くのは、前月の給与が無いときと、10倍を超えるときだけである。別表第四の率で計算するときは関係しない(同項第1号イ)。
賞与を複数回出した場合は
支払のたびに、その賞与について第186条で計算する(所得税法第186条第1項)。前月の給与も、それぞれの賞与を支払う月の前月の分を見る。
退職金は賞与ですか
別である。 退職手当等は所得税法第199条以下による。退職金から引かれる所得税を参照。
過去の時点や2027年の条文でも計算できますか
この道具は時点を選べる。 その時点の別表第四と別表第二を法令から取っている。2027年1月1日施行の条文も選べる。いつの条文で計算するかを参照。
2027年1月から、復興特別所得税が1.1%になり、防衛特別所得税が加わる
2027年1月1日以後に源泉徴収する分から、復興特別所得税は所得税額の1.1%になる(2027年1月1日施行の復興財確法第28条第2項)。あわせて、防衛特別所得税を所得税額の1%徴収する(2027年1月1日施行の防衛財源確保法第5条の26第1項・第2項)。このページでは「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」を防衛財源確保法と略している。
合わせた率は102.1%のままである。1円未満の切り捨ても、所得税・復興特別所得税・防衛特別所得税を合わせた額で行う(2027年1月1日施行の防衛財源確保法第5条の29第2項)。同じ所得税額なら、合計は変わらない。
別表第四そのものも同じ日に改められる(2027年1月1日施行の所得税法別表第四)。前月の給与ごとの率の区切りが変わる。甲欄・扶養親族等0人で率が0%になるのは、前月の給与が82千円未満から87千円未満に広がる。
計算欄の上の「いつの条文で計算するか」で、まだ施行されていない条文を選ぶと、その条文で計算する。既定は、いま施行中の条文である。
この計算が扱っていないこと
- 通常の給与等の支給期が月の整数倍の期間ごと(2か月ごとなど)の場合の判定(所得税法第186条第1項第1号イのかっこ書き)。前月に給与が無くても、別表第四を使う場合がある
- 年最後の給与で年末調整をする月に賞与を払う場合(所得税法第186条第3項)。年末調整で生じる見込みの不足額を賞与の税額に足すことができる
- 年末調整(所得税法第190条・復興財確法第30条)
- 社会保険料の計算。控除後の額を入れてもらう形にしている