寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除は、いずれも本人の事情によって決まる所得控除である。金額は所得税法第80条・第81条・第82条にあるが、誰が当たるかは定義規定にある。
| 控除 | 金額 | 金額の条番号 | 要件の条番号 |
|---|---|---|---|
| ひとり親控除 | 35万円 | 所得税法第81条第1項 | 所得税法第2条第1項第31号 |
| 寡婦控除 | 27万円 | 所得税法第80条第1項 | 所得税法第2条第1項第30号 |
| 勤労学生控除 | 27万円 | 所得税法第82条第1項 | 所得税法第2条第1項第32号 |
3つの控除は、順番に判定する
ひとり親を先に見る。 寡婦の定義そのものが「ひとり親に該当しないもの」で始まっているためである(所得税法第2条第1項第30号)。
| 順 | 控除 | 額 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 1 | ひとり親控除 | 35万円 | 所得税法第81条第1項 |
| 2 | 寡婦控除 | 27万円 | 所得税法第80条第1項 |
| 3 | 勤労学生控除 | 27万円 | 所得税法第82条 |
ひとり親と寡婦は同時に当たらない。 勤労学生控除は別の条で、要件も別なので重ねられる。
ひとり親の要件は3つ
所得税法第2条第1項第31号が定めている。現に婚姻をしていない者、または配偶者の生死の明らかでない者であることが前提で、そのうえで3つを満たす。
| 要件 | 条番号 |
|---|---|
| 生計を一にする子がいること | 所得税法第2条第1項第31号イ |
| 合計所得金額が500万円以下であること | 同号ロ |
| 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者として財務省令で定めるものがいないこと | 同号ハ |
性別を問わない。 条文は「現に婚姻をしていない者又は配偶者の生死の明らかでない者」と書いており、男女で分けていない。
寡婦の要件は、離婚と死別で違う
所得税法第2条第1項第30号が、イとロに分けている。
| 区分 | 扶養親族 | 合計所得金額 | 事実婚 | 条番号 |
|---|---|---|---|---|
| 夫と離婚した後婚姻をしていない | 必要 | 500万円以下 | いないこと | 所得税法第2条第1項第30号イ |
| 夫と死別した後婚姻をしていない、または夫の生死が明らかでない | 不要 | 500万円以下 | いないこと | 同号ロ |
離婚のほうだけ扶養親族が要る。 死別の側(ロ)は扶養親族の有無を問わない。条文がイ(1)にだけ「扶養親族を有すること」を置いている。
寡婦は「夫と」離婚・死別した者に限られる。 ひとり親と違い、条文が性別を分けている。
ひとり親と寡婦は重ならない
第30号は寡婦を「ひとり親に該当しないもの」と定めている。したがって生計を一にする子がいてひとり親の要件を満たす場合、寡婦控除ではなくひとり親控除になる(所得税法第2条第1項第30号)。
金額はひとり親控除が35万円(所得税法第81条第1項)、寡婦控除が27万円(同法第80条第1項)である。
勤労学生の要件は所得が2段
所得税法第2条第1項第32号が定めている。
| 要件 | 額 | 条番号 |
|---|---|---|
| 合計所得金額 | 85万円以下 | 所得税法第2条第1項第32号 |
| うち給与所得等以外の所得 | 10万円以下 | 同号 |
2つとも満たす必要がある(所得税法第2条第1項第32号)。給与以外の所得が10万円を超えると、合計所得金額が85万円以下でも当たらない(同号)。
対象になるのは、自己の勤労に基づいて得た事業所得・給与所得・退職所得・雑所得がある者である(所得税法第2条第1項第32号)。学校の範囲も同号のイ〜ハで決まっている。学校教育法第1条の学校(イ)、専修学校・各種学校のうち政令で定める課程を履修するもの(ロ)、職業訓練法人の行う職業訓練を受ける者(ハ)である。
住民税の額は違う
| 控除 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| ひとり親控除 | 35万円(所得税法第81条第1項) | 30万円(地方税法第314条の2第1項第8号の2) |
| 寡婦控除 | 27万円(所得税法第80条第1項) | 26万円(地方税法第314条の2第1項第8号) |
| 勤労学生控除 | 27万円(所得税法第82条) | 26万円(地方税法第314条の2第1項第9号) |
道府県民税の側は同法第34条第1項の対応する号にある。
端数の扱い
所得税法第80条・第81条・第82条は端数について何も書いていない。 35万円・27万円のいずれかをそのまま引く。
よくある取り違え
1. 「寡婦控除は女性だけ、ひとり親は男女」
寡婦は「夫と」離婚・死別した者に限られる(所得税法第2条第1項第30号)。ひとり親は性別を問わない(同項第31号)。ここは条文の書き方が違う。
2. 「ひとり親と寡婦を両方引ける」
引けない。 寡婦の定義が「ひとり親に該当しないもの」である(所得税法第2条第1項第30号)。
3. 「死別なら子がいなくても寡婦」
そのとおりである(所得税法第2条第1項第30号ロ)。ただし離婚の場合は扶養親族が要る(同号イ(1))。両者を混ぜないこと。
4. 「勤労学生は収入130万円まで」
条文が見ているのは合計所得金額85万円以下と、給与以外の所得10万円以下である(所得税法第2条第1項第32号)。収入の額は条文に出てこない。
5. 「事実婚でも寡婦控除は使える」
使えない。 「事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者……がいないこと」が要件である(所得税法第2条第1項第30号イ(3)・第31号ハ)。
よくある質問
子の所得に条件はありますか
ひとり親の要件でいう「子」は、生計を一にする子である(所得税法第2条第1項第31号イ)。所得の要件は同号かっこ書きと政令にある。
扶養控除と重ねられますか
重ねられる。別の条である。 扶養控除は所得税法第84条、ひとり親控除は同法第81条にある。扶養控除を参照。
障害者控除と重ねられますか
重ねられる(所得税法第79条)。障害者控除には本人の所得の上限が無い点も違う。障害者控除を参照。
勤労学生控除と扶養控除は両立しますか
別の人についての控除である。 勤労学生控除は本人(所得税法第82条)、扶養控除は扶養親族について(同法第84条第1項)引く。
合計所得金額500万円はどう数えますか
純損失の繰越控除と雑損失の繰越控除を適用しないで計算した、総所得金額・退職所得金額・山林所得金額の合計額である(所得税法第2条第1項第30号イ(2))。繰越控除を引く前で見る。
年の途中で離婚した場合は
判定の時点は所得税法第85条にある。 この道具は要件を選んでもらう形にしている。
所得税の計算のどこに入るか
いずれも所得控除である。所得税法第21条第1項第3号の段で、税率を当てる前の所得から引く。
所得控除どうしの順序は、雑損控除だけが先と決まっている(所得税法第87条第1項)。同項は障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除を名指しで挙げている。
この計算が扱っていないこと
- 判定の時点(所得税法第85条)
- 住民税の額(地方税法第314条の2第1項第8号・第8号の2・第9号)
- 学校の範囲の判定(所得税法第2条第1項第32号イ〜ハと政令)