「消費税10%」という率は、どの条文にも書かれていない。 消費税法第29条第1号が定めるのは100分の7.8で、残りは地方消費税である(地方税法第72条の83)。
消費税法が定めるのは7.8%と6.24%
消費税の税率は、次のとおりである(消費税法第29条)。
| 区分 | 税率 | 条番号 |
|---|---|---|
| 課税資産の譲渡等(軽減対象を除く)、特定課税仕入れ、課税貨物 | 100分の7.8 | 消費税法第29条第1号 |
| 軽減対象課税資産の譲渡等、軽減対象課税貨物 | 100分の6.24 | 同条第2号 |
消費税法第29条だけが税率を定めている。 課税標準は同法第28条第1項にある。課税資産の譲渡等の対価の額である。率と課税標準で条が分かれている。
地方消費税は、対価ではなく消費税額に掛ける
地方消費税の税率は78分の22である(地方税法第72条の83)。
この78分の22を掛ける相手は、対価の額ではない。 地方消費税の課税標準は、消費税法第45条第1項第4号に掲げる消費税額である(地方税法第72条の77第2号)。
したがって対価が10,000円のとき、消費税法第29条第1号と地方税法第72条の83から次のようになる。
| 順 | 計算 | 額 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 1 | 10,000円 × 7.8% | 780円 | 消費税法第29条第1号 |
| 2 | 780円 × 22 ÷ 78 | 220円 | 地方税法第72条の83 |
| 合計 | 1,000円 |
結果として対価の10%になるが、10%という数字はどちらの法令にも無い(消費税法第29条第1号・地方税法第72条の83)。
軽減税率も同じである。消費税法第29条第2号の100分の6.24で 10,000円 × 6.24% = 624円、地方税法第72条の83で 624円 × 22 ÷ 78 = 176円、合計800円になる。8%という数字も条文には無い。
地方消費税は「譲渡割」と「貨物割」に分かれる
| 割 | 何に課すか | 条番号 |
|---|---|---|
| 譲渡割 | 課税資産の譲渡等に係る消費税額 | 地方税法第72条の77第2号 |
| 貨物割 | 課税貨物に係る消費税額 | 地方税法第72条の77第3号 |
どちらも課税標準は「消費税額」である。 売上ではない。
税率は78分の22で共通である(地方税法第72条の83)。
国と地方が連動する仕組み
地方消費税の課税標準が国の消費税額なので、国税の率が変われば地方消費税も連動して動く。
| 国税 | 地方 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 標準 | 7.8%(消費税法第29条第1号) | 7.8% × 22/78 = 2.2% | 10% |
| 軽減 | 6.24%(消費税法第29条第2号) | 6.24% × 22/78 = 1.76% | 8% |
「10%」も「8%」も、どちらの法律にも書かれていない。 消費税法第29条の率と地方税法第72条の83の率を掛け合わせた結果である。
軽減税率の対象は別表第一にある
軽減対象課税資産の譲渡等とは、課税資産の譲渡等のうち別表第一に掲げるものをいう(消費税法第2条第1項第9号の2)。
別表第一が掲げているのは2つである(消費税法別表第一)。
- 飲食店業その他の政令で定める事業を営む者が行う食事の提供(同表第1号イ)
- 相手方が指定した場所で行う加熱・調理・給仕等の役務を伴う飲食料品の提供(同号ロ)
- 一定の題号を用い、政治・経済・社会・文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞で、週に2回以上発行するものの定期購読契約に基づく譲渡(同表第2号)
新聞は「週2回以上発行」と「定期購読契約」の両方が要件である(消費税法別表第一第2号)。
この道具は判定をしていない。
端数処理は国税通則法にある
消費税法第29条には端数の定めが無い。
国税の確定金額は100円未満切捨てで、国税通則法第119条第1項による。 消費税額そのものの端数は同条による。
取引ごとの消費税相当額の端数処理は、法令が定めていない。 事業者の判断による。このページは切り捨てている。これは条文から出したものではない。
納税義務との関係
消費税法第29条は税率を定めるだけである。 誰が納めるかは同法第5条第1項、免除は同法第9条第1項にある。
消費税の納税義務の免除の判定を参照。
簡易課税・中間申告との関係
どちらも税率とは別の条である。消費税の簡易課税・消費税の中間申告を参照。
よくある取り違え
1. 「消費税法に10%と書いてある」
書かれていない(消費税法第29条第1号)。国税は7.8%である。
2. 「軽減税率は8%と条文にある」
6.24%(消費税法第29条第2号)と78分の22(地方税法第72条の83)の合成である。
3. 「地方消費税は売上の2.2%」
78分の22で、課税標準は消費税額である(地方税法第72条の83・第72条の77第2号)。率の掛かる相手が消費税額なので、売上に対する2.2%とは計算の順序が違う。
4. 「新聞はすべて軽減税率」
週2回以上発行し、定期購読契約に基づくものに限られる(消費税法別表第一第2号)。
5. 「テイクアウトは軽減税率」
飲食店業等を営む者が行う食事の提供とケータリング等が除かれている(消費税法別表第一第1号)。個別の判定はこの道具では行わない。
6. 「端数処理は消費税法にある」
無い(消費税法第29条)。国税の確定金額の端数は国税通則法第119条による。
よくある質問
酒類は軽減税率ですか
飲食料品から酒類が除かれている(消費税法別表第一第1号)。
医薬品は
飲食料品に当たるかどうかによる(消費税法別表第一第1号)。
経過措置の8%とは違いますか
軽減税率の8%は消費税法第29条第2号による。 平成26年・令和元年の税率引上げに伴う経過措置は別にある。
端数はどう処理しますか
消費税法第29条には端数の定めが無い。 国税通則法第119条による。
納税義務はいつ発生しますか
消費税法第9条第1項に納税義務の免除の定めがある。消費税の納税義務の免除の判定を参照。
免税事業者は消費税を受け取れますか
消費税法第29条は税率を定めるだけである。 受け取りの可否は書かれていない。
簡易課税とは何ですか
消費税法第37条にある。消費税の簡易課税を参照。
中間申告は必要ですか
消費税法第42条にある。消費税の中間申告を参照。
インボイスとの関係は
適格請求書発行事業者は納税義務の免除の対象から除かれる(消費税法第9条第1項かっこ書き)。税率は変わらない。 適格請求書の記載事項は消費税法第57条の4にある。
輸出取引は
消費税法第7条に免税の定めがある。
輸入するときは
貨物割になる(地方税法第72条の77第3号)。国税の側は消費税法第4条第2項による。
この計算が扱っていないこと
- 軽減税率の対象かどうかの判定(消費税法別表第一)
- 仕入れに係る消費税額の控除(消費税法第30条)
- 納税義務の免除(消費税法第9条)
- 簡易課税(消費税法第37条)
- 端数処理(国税通則法第119条)
- 輸出免税(消費税法第7条)
- 適格請求書の要否(消費税法第57条の4)
数字をどう確かめたかは検算の方法にある。