配偶者控除は、控除対象配偶者がいる居住者について、本人の合計所得金額に応じた額を引く制度である(所得税法第83条第1項)。
3段階と号番号
| 本人の合計所得金額 | 控除額 | 老人控除対象配偶者 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 900万円以下 | 38万円 | 48万円 | 所得税法第83条第1項第1号 |
| 900万円超 950万円以下 | 26万円 | 32万円 | 同項第2号 |
| 950万円超 1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 | 同項第3号 |
| 1,000万円超 | なし | なし | 控除対象配偶者に当たらない |
「控除対象配偶者」の要件はどこにあるか
配偶者控除の額は第83条にあるが、誰が対象になるかは定義規定にある。
同一生計配偶者とは、生計を一にする配偶者のうち合計所得金額が58万円以下である者をいう(所得税法第2条第1項第33号)。控除対象配偶者とは、同一生計配偶者のうち、合計所得金額が1,000万円以下である居住者の配偶者をいう(同項第33号の2)。老人控除対象配偶者とは、控除対象配偶者のうち年齢70歳以上の者をいう(同項第33号の3)。
したがって本人の所得が1,000万円を超えると、配偶者の所得がいくらであっても配偶者控除はない(所得税法第2条第1項第33号の2)。
配偶者の所得が58万円を超えたとき
配偶者の合計所得金額が58万円を超えると同一生計配偶者に当たらなくなり、配偶者控除の対象から外れる(所得税法第2条第1項第33号)。かわりに配偶者特別控除の対象になることがある。そちらは配偶者の合計所得金額が133万円以下であることが要件である(所得税法第83条の2第1項)。
青色事業専従者として給与の支払を受ける者などは、同一生計配偶者から除かれる(所得税法第2条第1項第33号)。
誰が控除対象配偶者になるか
条文は2段の入れ子になっている。同一生計配偶者 → 控除対象配偶者 の順に絞られる。
| 語 | 中身 | 条番号 |
|---|---|---|
| 同一生計配偶者 | 居住者の配偶者で生計を一にし、合計所得金額が58万円以下の者 | 所得税法第2条第1項第33号 |
| 控除対象配偶者 | 同一生計配偶者のうち、合計所得金額が1,000万円以下である居住者の配偶者 | 所得税法第2条第1項第33号の2 |
| 老人控除対象配偶者 | 控除対象配偶者のうち、年齢70歳以上の者 | 所得税法第2条第1項第33号の3 |
要件が2つある。配偶者の側の所得と、本人の側の所得である。
- 配偶者の合計所得金額が58万円以下(所得税法第2条第1項第33号)
- 本人の合計所得金額が1,000万円以下(同項第33号の2)
本人の所得が1,000万円を超えると、配偶者の所得がいくら低くても配偶者控除は無い。 第83条第1項の表そのものが950万円超1,000万円以下で終わっているのは、この定義に対応している。
青色事業専従者は配偶者から除かれる
青色事業専従者として給与の支払を受ける配偶者と、事業専従者である配偶者は、同一生計配偶者から除かれる(所得税法第2条第1項第33号かっこ書き・同法第57条第1項・第3項)。
給与を払っている側で必要経費にしているので、控除の側では数えない。
住民税の配偶者控除は額が違う
| 本人の合計所得金額 | 所得税(一般/老人) | 住民税(一般/老人) | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 900万円以下 | 38万円/48万円 | 33万円/38万円 | 所得税法第83条第1項第1号/地方税法第314条の2第1項第10号イ |
| 900万円超 950万円以下 | 26万円/32万円 | 22万円/26万円 | 同項第2号/同号ロ |
| 950万円超 1,000万円以下 | 13万円/16万円 | 11万円/13万円 | 同項第3号/同号ハ |
所得税は所得税法第83条第1項第1号〜第3号、住民税は地方税法第314条の2第1項第10号イ〜ハである。段の切れ目(900万円・950万円・1,000万円)は同じだが、額はすべて違う。
道府県民税の側は同法第34条第1項第10号にある。住民税の所得割そのものは住民税の所得割と均等割にある。
配偶者特別控除との境目
配偶者の合計所得金額が58万円を超えると、配偶者控除は無くなる(所得税法第2条第1項第33号)。そこから先は配偶者特別控除(所得税法第83条の2)になる。
| 配偶者の合計所得金額 | どちらか | 条番号 |
|---|---|---|
| 58万円以下 | 配偶者控除 | 所得税法第83条第1項 |
| 58万円超 133万円以下 | 配偶者特別控除 | 所得税法第83条の2第1項 |
| 133万円超 | どちらも無い | — |
両方を同時に引くことはできない。 配偶者特別控除の対象は「控除対象配偶者に該当しないもの」に限られている(所得税法第83条の2第1項)。配偶者特別控除を参照。
端数の扱い
所得税法第83条第1項は端数について何も書いていない。 38万円・48万円・26万円・32万円・13万円・16万円のいずれかをそのまま引く。
よくある取り違え
1. 「配偶者の所得が103万円以下なら配偶者控除」
103万円は条文に出てこない。 所得税法第2条第1項第33号が見ているのは合計所得金額58万円以下である。給与だけの配偶者なら、給与収入から給与所得控除を引いた後の額で判定する(給与所得控除の計算)。
2. 「本人の所得は関係ない」
関係する。 控除対象配偶者の定義は「合計所得金額が千万円以下である居住者の配偶者」である(所得税法第2条第1項第33号の2)。本人が1,000万円を超えると控除は無い。
3. 「70歳以上なら誰でも老人控除対象配偶者」
控除対象配偶者であることが先に要る(所得税法第2条第1項第33号の3)。配偶者の合計所得金額が58万円を超えていれば、そもそも控除対象配偶者に当たらない。
4. 「住民税も38万円」
住民税は33万円である(地方税法第314条の2第1項第10号イ)。老人控除対象配偶者は38万円で、これは所得税の一般の額と同じ数字だが、別の制度の別の区分の額である。
5. 「配偶者控除と配偶者特別控除は両方引ける」
引けない。 配偶者特別控除は「控除対象配偶者に該当しないもの」を対象にしている(所得税法第83条の2第1項)。
よくある質問
内縁の配偶者でも引けますか
所得税法第2条第1項第33号は「居住者の配偶者」と書いている。 民法上の配偶者を指す。内縁関係は含まれない。なお寡婦控除・ひとり親控除の側には「事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないこと」という要件があり(所得税法第2条第1項第30号イ(3)・第31号ハ)、そちらは事実上の関係を見ている。
年の途中で結婚した場合は
所得税法第83条第1項は時点を書いていない。 判定の時点は同法第85条にある。この道具は区分を入れてもらう形にしている。
配偶者が障害者の場合は
障害者控除を別に引ける(所得税法第79条第2項)。同項は「同一生計配偶者又は扶養親族が障害者である場合」と書いており、控除対象配偶者に限っていない。本人の合計所得金額が1,000万円を超えて配偶者控除が無くなっても、障害者控除は引ける。障害者控除を参照。
共働きで両方が相手を配偶者控除の対象にできますか
所得税法第83条第1項は「居住者が控除対象配偶者を有する場合」と書いている。 控除対象配偶者は合計所得金額58万円以下である必要があるので(所得税法第2条第1項第33号)、両方が58万円以下でなければ双方向にはならない。
配偶者が亡くなった年は
所得税法第83条には定めが無い。 判定の時点は同法第85条にある。
扶養控除と重ねられますか
配偶者は扶養親族から除かれている(所得税法第2条第1項第34号)。同じ人について配偶者控除と扶養控除の両方を引くことはない。扶養控除を参照。
条文の言い方をそのまま読む
所得税法第83条第1項の各号は、本則とかっこ書きの2段で書かれている。
一 その居住者の……合計所得金額……が九百万円以下である場合 三十八万円(その控除対象配偶者が老人控除対象配偶者である場合には、四十八万円)
本則が38万円で、かっこ書きが老人の48万円である(所得税法第83条第1項第1号)。老人かどうかで額が置き換わる。同項第2号・第3号も同じ形をしている。
同条第2項は「前項の規定による控除は、配偶者控除という」とだけ書いている。
所得税の計算のどこに入るか
配偶者控除は所得控除である。所得税法第21条第1項第3号の段で、税率を当てる前の所得から引く。
所得控除どうしの順序は、雑損控除だけが先と決まっている(所得税法第87条第1項)。同項は配偶者控除を名指しで挙げている。引く先は総所得金額・山林所得金額・退職所得金額の順である(同条第2項)。
何を入れれば正しく計算できるか
上の計算欄に入れるのは本人の合計所得金額と配偶者の年齢の区分である(所得税法第83条第1項各号)。
配偶者の合計所得金額が58万円以下であることが前提である(所得税法第2条第1項第33号)。超えていれば控除対象配偶者に当たらないので、この計算の対象外になる。その場合は配偶者特別控除を使う。
所得の要件は、控除ごとに数字が違う
配偶者控除は2つの所得を見る。似た要件が他の控除にもあるが、見ている相手も数字も違う。
| 控除 | 誰の所得を見るか | 額 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 配偶者控除 | 配偶者 | 58万円以下 | 所得税法第2条第1項第33号 |
| 配偶者控除 | 本人 | 1,000万円以下 | 所得税法第2条第1項第33号の2 |
| 配偶者特別控除 | 配偶者 | 58万円超133万円以下 | 所得税法第83条の2第1項 |
| 配偶者特別控除 | 本人 | 1,000万円以下 | 所得税法第83条の2第1項 |
| 扶養控除 | 扶養親族 | 58万円以下 | 所得税法第2条第1項第34号 |
| 障害者控除 | 要件なし | — | 所得税法第79条 |
| 基礎控除 | 本人 | 2,500万円以下 | 所得税法第86条第1項 |
同じ58万円という数字が、配偶者と扶養親族の両方に出てくる。 ただし条は別で、配偶者は所得税法第2条第1項第33号、扶養親族は同項第34号である。
源泉控除対象配偶者という別の語がある
所得税法第2条第1項第33号の4に源泉控除対象配偶者という語がある。本人の合計所得金額が900万円以下で、配偶者の合計所得金額が95万円以下の場合をいう。
これは月々の源泉徴収で使う区分であって、年末に確定する配偶者控除とは別の話である(所得税法第2条第1項第33号の4)。数字(900万円・95万円)も、配偶者控除の要件(1,000万円・58万円。所得税法第2条第1項第33号・第33号の2)とは違う。源泉徴収税額表の扶養親族等の数は給与の源泉徴収税額(月額表)で扱っている。
判定の時期は年末
控除対象配偶者に該当するかどうかの判定は、その年12月31日の現況による(所得税法第85条第3項)。
年の途中で死亡した場合は、その時の現況による(同項かっこ書き)。
配偶者は扶養親族から除かれる
扶養親族の定義が「居住者の親族(その居住者の配偶者を除く。)」と書いている(所得税法第2条第1項第34号)。
同じ人について配偶者控除と扶養控除の両方を引くことはない。扶養控除を参照。
青色事業専従者は除かれる
同一生計配偶者の定義が、青色事業専従者等を除いている(所得税法第2条第1項第33号)。
給与を払って必要経費にしている側では、控除の対象に数えない(所得税法第57条第1項・第3項)。
老人控除対象配偶者の年齢
控除対象配偶者のうち、年齢70歳以上の者である(所得税法第2条第1項第33号の3)。
判定はその年12月31日の現況による(所得税法第85条第3項)。
この計算が扱っていないこと
- 配偶者の合計所得金額の判定(所得税法第2条第1項第33号)。58万円以下であることを前提にしている
- 住民税の配偶者控除(地方税法第314条の2第1項第10号・同法第34条第1項第10号)
- 判定の時点(所得税法第85条)