退職金から引かれる所得税(退職所得の源泉徴収)
退職金から引かれる所得税(退職所得の源泉徴収)とは、退職手当等の支払者が、その支払の際に退職所得の金額をもとに計算した所得税および復興特別所得税を源泉徴収して納付する仕組みである(所得税法第201条第1項・第2項・別表第六/復興財確法第28条第2項・第31条第2項)。
退職所得の受給に関する申告書を出していないと、退職金の20%が引かれます(所得税法第201条第3項)。出していれば、課税退職所得金額に税率を当てます。
計算例
下の例はこの画面の計算そのもので出しています。 入力を変えると同じ形で計算します。どの行がどの条文から来たかを、行ごとに出しています。
既定の入力
退職手当等の金額 20,000,000円/勤続年数 30年/区分 一般の退職手当等/障害者になったことによる退職 いいえ/退職所得の受給に関する申告書を提出している はい
| 項目 | 金額 | 条番号 |
|---|
| 退職所得控除額 | 15,000,000円 | 所得税法別表第六(勤続年数30年の行(一般退職の場合)) |
| 課税退職所得金額(千円未満切捨て) | 2,500,000円 | 所得税法第201条第1項第1号イ(一般退職手当等) |
| 源泉徴収する所得税 | 152,500円 | 所得税法第89条第1項の表 |
| 復興特別所得税(所得税額の2.1%) | 3,202円 | 復興財確法第28条第2項 |
| 源泉徴収する額の合計 | 155,702円 | 復興財確法第31条第2項(所得税と復興特別所得税の合計額で、1円未満を切り捨てる) |
- 退職所得控除額は所得税法別表第六による(同法第201条第2項)
- 条番号
- 所得税法第201条第1項・第2項・別表第六/復興財確法第28条第2項・第31条第2項
- 適用
- 所得税法第201条。退職手当等
- 出どころ
- 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)
- 適用年度
- 所得税法 2026-08-12 施行(改正版 340AC0000000033_20260812_508AC0000000064)
- 出どころ
- 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十七号)
- 適用年度
- 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法 2026-04-01 施行(改正版 423AC0000000117_20260401_508AC0000000012)
- 取得日
- 2026-08-31
この計算は 2026-08-31 に取った条文で動いています。 それより後に改正があれば、反映されていないことがあります。所得税法 で今の条文を確かめられます。
確かめ方中 別表第六39年ぶんを、所得税法第30条第3項の算式と全数照合(3つの強さの違い)
どこまでを計算しているか
退職所得の受給に関する申告書に、その年に支払われた他の退職手当等がある旨の記載がある場合は、合算して計算し、既に徴収された所得税を控除する(所得税法第201条第1項第2号)。この道具はその場合を扱っていない。住民税の特別徴収は地方税法第328条の規定によるもので、ここでは扱わない。
条文
所得税法(2026-08-12 施行)/東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(2026-04-01 施行)から取りました。1988字。
この計算が使う退職所得控除額の表は、2024年4月1日時点と1字も違いません。 比べたのは別表の中身だけです。答えが同じことまでは確かめていません(比べ方)。
所得税法第201条第1項・第2項・別表第六/復興財確法第28条第2項・第31条第2項 を開く
(徴収税額)第二百一条第百九十九条(源泉徴収義務)の規定により徴収すべき所得税の額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める税額とする。一退職手当等の支払を受ける居住者が提出した退職所得の受給に関する申告書に、その支払うべきことが確定した年において支払うべきことが確定した他の退職手当等で既に支払がされたもの(次号において「支払済みの他の退職手当等」という。)がない旨の記載がある場合次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額を課税退職所得金額とみなして第八十九条第一項(税率)の規定を適用して計算した場合の税額イその支払う退職手当等が一般退職手当等(第三十条第七項(退職所得)に規定する一般退職手当等をいう。次号イ及び第二百三条第一項第二号(退職所得の受給に関する申告書)において同じ。)に該当する場合その支払う退職手当等の金額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額(当該金額に千円未満の端数があるとき、又は当該金額の全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てた金額。次号イにおいて同じ。)ロその支払う退職手当等が短期退職手当等(第三十条第四項に規定する短期退職手当等をいう。次号ロ及び第二百三条第一項第二号において同じ。)に該当する場合次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額(当該金額に千円未満の端数があるとき、又は当該金額の全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てた金額)(1)その支払う退職手当等の金額から退職所得控除額を控除した残額が三百万円以下である場合当該残額の二分の一に相当する金額(2)(1)に掲げる場合以外の場合百五十万円とその支払う退職手当等の金額から三百万円に退職所得控除額を加算した金額を控除した残額との合計額ハその支払う退職手当等が特定役員退職手当等(第三十条第五項に規定する特定役員退職手当等をいう。次号ハ及び第二百三条第一項第二号において同じ。)に該当する場合その支払う退職手当等の金額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額(当該金額に千円未満の端数があるとき、又は当該金額の全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てた金額。次号ハにおいて同じ。)二退職手当等の支払を受ける居住者が提出した退職所得の受給に関する申告書に、支払済みの他の退職手当等がある旨の記載がある場合次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額を課税退職所得金額とみなして第八十九条第一項の規定を適用して計算した場合の税額から、その支払済みの他の退職手当等につき第百九十九条の規定により徴収された又は徴収されるべき所得税の額を控除した残額に相当する税額イその支払う退職手当等とその支払済みの他の退職手当等がいずれも一般退職手当等に該当する場合その支払う退職手当等の金額とその支払済みの他の退職手当等の金額との合計額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額ロその支払う退職手当等とその支払済みの他の退職手当等がいずれも短期退職手当等に該当する場合次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額(当該金額に千円未満の端数があるとき、又は当該金額の全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てた金額)(1)その支払う退職手当等の金額とその支払済みの他の退職手当等の金額との合計額から退職所得控除額を控除した残額が三百万円以下である場合当該残額の二分の一に相当する金額(2)(1)に掲げる場合以外の場合その支払う退職手当等の金額とその支払済みの他の退職手当等の金額との合計額から三百万円に退職所得控除額を加算した金額を控除した残額と百五十万円との合計額ハその支払う退職手当等とその支払済みの他の退職手当等がいずれも特定役員退職手当等に該当する場合その支払う退職手当等の金額とその支払済みの他の退職手当等の金額との合計額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額ニイからハまでに掲げる場合以外の場合政令で定めるところにより計算した金額2前項各号に規定する退職所得控除額は、同項の規定による所得税を徴収すべき退職手当等を支払うべきことが確定した時の状況における第三十条第三項第一号に規定する勤続年数に準ずる勤続年数及び同条第六項第三号に掲げる場合に該当するかどうかに応ずる別表第六に掲げる退職所得控除額(同項第一号に掲げる場合に該当するときは、同項の規定に準じて計算した金額)による。3退職手当等の支払を受ける居住者がその支払を受ける時までに退職所得の受給に関する申告書を提出していないときは、第百九十九条の規定により徴収すべき所得税の額は、その支払う退職手当等の金額に百分の二十の税率を乗じて計算した金額に相当する税額とする。
これは退職所得に係る源泉徴収である(所得税法第4編第3章)。退職手当等を支払う者は、その支払の際に所得税を徴収して納付しなければならない(所得税法第199条)。徴収する税額は、退職所得の受給に関する申告書を提出しているかどうかで大きく変わる。
申告書を出したかどうかで、条が変わる
| 場合 | 何をするか | 条番号 |
|---|
| 申告書を提出した(他の退職手当等なし) | 課税退職所得金額とみなして第89条第1項の税率を適用 | 所得税法第201条第1項第1号 |
| 申告書を提出した(支払済みの他の退職手当等あり) | 合算して計算し、既に徴収された分を引く | 同項第2号 |
| 申告書を提出していない | 支払金額に100分の20 | 所得税法第201条第3項 |
申告書を出していないと、退職所得控除も2分の1も使えない。 退職金の全額に率が掛かる(所得税法第201条第3項)。
20.42%の内訳
所得税法第201条第3項は「100分の20」と書いている。
20.42%は、20%に復興特別所得税の2.1%を上乗せしたものである(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法第28条第1項)。
所得税法だけを読むと20%である(所得税法第201条第3項)。
3つの区分が、ここでも効く
第1号は、退職手当等の種類ごとにイ・ロ・ハに分かれている(所得税法第201条第1項第1号)。次の金額を課税退職所得金額とみなして、所得税法第89条第1項の税率を当てる。
| 枝 | 種類 | 課税退職所得金額とみなす額 | 条番号 |
|---|
| イ | 一般退職手当等 | (支払額 − 退職所得控除額)× 2分の1 | 所得税法第201条第1項第1号イ |
| ロ | 短期退職手当等(残額300万円以下) | 残額 × 2分の1 | 同号ロ(1) |
| ロ | 短期退職手当等(残額300万円超) | 150万円 +(退職手当等 − 300万円 − 退職所得控除額) | 同号ロ(2) |
| ハ | 特定役員退職手当等 | 支払額 − 退職所得控除額(2分の1にしない) | 同号ハ |
所得税法第30条第2項と同じ構造である。 源泉徴収の側でも同じ書き分けをしている。退職所得と退職所得控除を参照。
種類の定義は第30条を引いている。 一般退職手当等は第30条第7項、短期退職手当等は同条第4項、特定役員退職手当等は同条第5項である(所得税法第201条第1項第1号イ〜ハ)。
千円未満を切り捨てる
各枝のかっこ書きが「当該金額に千円未満の端数があるとき、又は当該金額の全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てた金額」と書いている(所得税法第201条第1項第1号イ〜ハ)。
全額が千円未満なら全額を切り捨てる。 端数だけの話ではない。
退職所得控除額は別表第六による
第201条の退職所得控除額は、勤続年数と障害退職に当たるかどうかに応じ、別表第六に掲げる額による(所得税法第201条第2項)。
別表第六は勤続年数ごとの表になっている。この表の額は、所得税法第30条第3項の算式と一致する。
| 勤続年数 | 一般退職 | 障害退職 | 条番号 |
|---|
| 2年以下 | 80万円 | 180万円 | 所得税法別表第六 |
| 3年 | 120万円 | 220万円 | 同表 |
| 20年 | 800万円 | 900万円 | 同表 |
| 21年 | 870万円 | 970万円 | 同表 |
| 40年 | 2,200万円 | 2,300万円 | 同表 |
| 41年以上 | 2,200万円に、40年を超える1年ごとに70万円を加算 | 2,300万円に同じく加算 | 同表 |
障害退職の額は、一般退職の額に100万円を足したものになっている。 けんざんは別表第六の39年ぶんすべてを、退職所得で使っている第30条第3項の算式と突き合わせている(検算の方法)。
復興特別所得税は別に足す
第89条の税率で出るのは所得税である。これに2.1%を足し(復興財確法第28条第2項)、合計額の1円未満を切り捨てる(同法第31条第2項)。
支払済みの他の退職手当等がある場合
第2号は、その年に既に支払われた他の退職手当等と合算して計算し、そこから既に徴収された税額を引く(所得税法第201条第1項第2号)。
この道具は第1号(他の退職手当等なし)を扱っている。
申告書の提出先と時期
退職所得の受給に関する申告書は、退職手当等の支払者を経由して提出する(所得税法第203条第1項)。支払を受ける時までに提出する。
住民税は別に特別徴収される
退職所得に係る住民税は、支払の際に特別徴収される。 道府県民税は地方税法第50条の2以下、市町村民税は地方税法第328条以下にある。退職金にかかる住民税を参照。
よくある取り違え
1. 「申告書を出さなくても退職所得控除は使える」
使えない(所得税法第201条第3項)。支払金額に20.42%である。
2. 「20.42%は所得税法に書いてある」
所得税法第201条第3項は100分の20である。 2.1%の上乗せは復興財確法第28条第1項による。
3. 「端数だけを切り捨てる」
全額が千円未満なら全額を切り捨てる(所得税法第201条第1項第1号イ)。
4. 「源泉徴収されたら確定申告は不要」
所得税法第121条第2項に申告不要の定めがあるが、要件がある。
5. 「役員でも2分の1になる」
特定役員退職手当等は2分の1にしない(所得税法第201条第1項第1号ハ・同法第30条第5項)。
よくある質問
退職所得控除額はどう計算しますか
所得税法第30条第3項による。 勤続20年以下は40万円×年数、20年超は800万円+70万円×(年数−20年)である。
勤続年数に端数がある場合は
所得税法施行令第69条による。
障害退職の場合は
退職所得控除額に100万円を加算する(所得税法第30条第6項第3号)。
同じ年に2か所から受けた場合は
所得税法第201条第1項第2号による。
死亡退職の場合は
相続税の対象になる場合がある(相続税法第3条第1項第2号)。所得税の源泉徴収とは別である。
確定申告で還付されますか
源泉徴収された税額は所得税額から引く(所得税法第120条第1項第5号)。
この計算が扱っていないこと
- 支払済みの他の退職手当等がある場合(所得税法第201条第1項第2号)
- 勤続年数の数え方(所得税法施行令第69条)
- 住民税の特別徴収(地方税法第50条の5・第328条の5)
- 申告書の記載事項(所得税法第203条第1項)
退職所得の金額そのもの(確定申告で使う金額)は退職所得で計算する。数字をどう確かめたかは検算の方法にある。
関連する計算
同じ束のものと、同じ法令によるものを並べています。
この計算を何と突き合わせているか いつの条文で計算するか 計算の一覧